年収がほぼ同じ夫婦の子をどちらの健康保険の扶養に入れるのか、扶養認定に時間がかかる場合があります。
認定に時間がかかるとその間、子は無保険状態となってしまい、病院で受診した場合等には保険給付を受けることができないため、いったん全額を支払い、後から払い戻しを受ける(償還払い)を強いられることがあります。
こういった状況を防ぐことが発端で、年収がほぼ同じ夫婦の扶養認定について新しい基準が策定され、令和3年8月1日から適用されます。
認定対象者が子以外の場合にも適用されますが、今回は子を扶養に入れる場合を例にご案内します。
【1】夫婦とも被用者保険(健康保険等)の被保険者の場合
<原則>
夫婦双方の年間収入を比較し、年間収入が多い方の被扶養者とされます。
年間収入は、過去・現時点・将来の収入等から、今後1年間の収入を見込んだものとされます。
<例外1>
夫婦双方の年間収入の差額が1割以内である場合は、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とされます。
<例外2>
夫婦双方又はいずれか一方が共済組合員で扶養手当等の支給が認定されている場合は、その認定を受けている方の被扶養者として差し支えないとされます。
【2】夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合
被用者保険の被保険者は年間収入、
国民健康保険の被保険者は直近の年間所得で見込んだ年間収入
を比較します。
年間収入が、被用者保険の被保険者のほうが多い場合は、その方の被扶養者とされます。
国民健康保険の被保険者のほうが多い場合は、国民健康保険に被扶養者という区分はありませんので、子も国民健康保険の被保険者となります。
【3】扶養認定されなかった場合
例えば、夫の被扶養者として認定されなかった場合は、妻が加入する健康保険へ届出ることになります。届出の際は、夫が加入する健康保険から発行される通知を添付します。
妻が加入する健康保険が、夫が加入する健康保険の決定に疑義がある場合は、保険者間で協議が行われ、どちらの被扶養者とするかが決定されます。
【4】育児休業等を取得した場合
育児休業等により、子を扶養に入れている方の収入が一時的になくなる(または減る)場合であっても、特例的に被扶養者は異動しません。
ただし、新たに誕生した子については、改めて上記1又は2の認定手続きが行われます。
【5】年間収入の逆転に伴い被扶養者認定を削除する場合
年間収入が多くなった方の扶養認定が行われた後に、扶養から外す届出を行う流れとなります。
【6】被扶養者の認定結果に異議がある場合
夫婦又は関係保険者の申立てにより、斡旋が行われます。
原則の考え方は7月以前と変わりませんが、被扶養者の地位安定を図るため、より具体的かつ明確な基準が適用されます。
(山田)