社労士コラム

労働時間

療養・育児・介護と仕事を両立する方の標準報酬月額の特例措置

2026.08.13.

2027年1月から、「療養・育児・介護」と「仕事」を両立するために、時短勤務等の就労調整を行ったことで報酬が大幅に減少した場合の標準報酬月額の特例措置が開始されます。

通常の随時改定は固定的賃金の変動から3ヶ月経過後に判断しますが、特例措置は急減した月から標準報酬月額を改定できます。
具体的には、急減後の報酬総額を基にした標準報酬月額が従前より2等級以上低下し、かつ、その状態が3ヶ月以上続くことが見込まれる場合に、対象者が書面で同意することで申請ができます。随時改定と異なり、固定的賃金の変動は必要ありません。

注意点として
・対象者から書面による同意を得る必要があり、申請時にはその同意書を添付します。
・標準報酬月額が低下することにより社会保険料が低下しますが、将来受給する年金額や傷病手当金・出産手当金の支給額も減少となりますので、同意を得る際には対象者へ十分に説明する必要があります。
・申請時は、特例用の申請様式を使用します。
・就労調整が終了・縮小し、報酬増加後の総額を基にした標準報酬月額が2等級以上上昇した場合は、固定的賃金の変動に関わらず申請が必要で、報酬が増加した月から標準報酬月額が改定されます。通常の随時改定と申請時期が異なりますので、注意が必要です。

社内のチェックリストや対象者への案内文書へ追加する等、手続き漏れが無いように工夫すると良いでしょう。

療養、育児又は介護により報酬が急減した者についての健康保険法及び厚生年金保険法の標準報酬月額の保険者算定の特例について

(山田)

育児休業からの復職者が多い今こそ確認したい「養育特例」の手続

2026.06.12.

4月の保育園入園を経て、育児休業から職場復帰を迎える従業員は多く、この時期は人事労務担当者にとって休業明けの社会保険手続きが集中する時期です。
その中で見落とされやすいのが、3歳未満の子を養育する期間に標準報酬月額(給与の等級)が下がっても、将来受け取る年金額が下がらないようにする「厚生年金保険 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(養育特例)」です。時短勤務の選択や残業の減少によって給与が下がりやすい復職直後には、従業員の将来の安心を支える制度となります。
この手続きについて、日本年金機構は申出書に関する“不備・誤りの多い事例”を公表しています。よくある誤りとして、次のケースがあります。
●「養育特例開始年月日」に「子の生年月日」を誤記するケース
子どもが生まれた日ではなく、「実際に仕事を再開して養育が始まった日」(原則、休業終了日の翌日=復職日)を記入します。
●産前産後休業または育児休業が終了する前に提出してしまうケース
産前産後休業または育児休業等による保険料免除期間は本特例の対象外となるため、復職(休業終了)後に手続きを行います。

また、注意しておきたい点として本特例は自動適用ではなく「本人の申出」を受けて会社が申請するため、復職時の丁寧な案内が従業員の安心につながります。男女問わず利用できるほか、上の子が3歳になる前に次の子の養育を開始する場合、上の子の休業前に登録されていた等級が引き継がれる仕組みもあります。
復職後の手続きタスクに加えておくなどして、従業員への案内と手続きをスムーズに進められるように準備しましょう。
弊所では、社会保険・労働保険の手続きのアウトソーシングを通じて、企業の事務処理負担軽減をサポートしています。コチラをご覧ください。
(小林)

36協定の提出様式の種類と選び方

2026.05.01.

年度の切り替わり前後を36協定(時間外・休日労働に関する協定届)の見直し時期としている企業も多いと思います。
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(通称:働き方改革関連法)の施行で36協定のルールが整理され、36協定の様式は一般条項・特別条項に加えて業種別特例が整備され、以前より複雑になりました。
今回は様式の種類と選び方について整理します。

36協定の様式は3つの系統に分類されます
・一般条項(様式第9号)
・特別条項付き(様式第9号の2)
・業種別特例(建設・運転・医師・研究開発)

■一般条項(様式第9号)
時間外労働が月45時間かつ年360時間以内に収まる場合に使用する標準様式です。
【作成前の確認ポイント】
・時間外労働の上限時間を超えないか
・休日労働の有無
・対象労働者の範囲
・労働者代表の選出手続
(管理監督者は代表になれない、会社が指名してはならない、民主的な選出が必要)

■特別条項付き(様式第9号の2)
繁忙期など月45時間を超える、または年間で360時間を超える可能性がある場合に使用します。
※休日労働は時間外労働の上限時間(月45時間・年360時間)には含まれませんが、特別条項の上限規制(下記参照)には算入されます。
【作成前の確認ポイント】
・特別条項の発動要件(理由・手続・対象者など)を明確にする
・上限規制を遵守すること
年720時間以内、2~6か月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満(休日労働含む)、発動は年6回以内

■業種別特例(専用様式)
建設業・自動車運転・医師・研究開発など、上限規制に特例がある業務は専用様式を使用します。
•建設業:9号の3の2(一般)/3の3(特別)
•自動車運転:9号の3の4(一般)/3の5(特別)
•医師:9号の4(一般)/9号の5(特別)
•研究開発:9号の3

■提出様式を決めるときの考え方
①一般条項で足りるか
②特別条項が必要か
③業種別特例の対象か

締結に向けて、繁忙期の見込みや業務内容を早めに確認しましょう。
参考:厚生労働省 東京労働局「時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)
(小林)

治療と就業の両立支援

2026.02.27.

令和8年4月から、病気を抱える労働者の「治療と就業の両立支援」が事業主の努力義務になります。

現状、高齢者の就労増加等を背景に、疾病により通院しながら働く労働者は年々増加しています。また、医療技術等が進歩し、かつては不治の病とされていた疾病が、長く付き合う病気に変化しています。
しかし、疾病に対する労働者自身の理解不足や職場の理解・支援体制が不十分であることにより、退職に至る場合や業務上の理由で適切な治療を受けられない場合もあります。
両立支援は、労働者の健康確保・就業継続だけでなく、会社にとっても継続的な人材確保・労働者の安心感やモチベーション向上による人材定着・生産性向上・健康経営の実現等の意義があると考えられています。

支援体制は、「主治医」「会社・産業医」「支援機関の両立支援コーディネーター」によるトライアングル型のサポート体制を構築して進めます。

支援は下記の流れで進めます。
①労働者から会社に両立支援を申し出る
※労働者は、あらかじめ主治医に自らの仕事に関する情報を提供し、主治医から支援に必要な情報(主治医意見書等)の提供を受け、会社に提出する
②会社は産業医等から意見を聴取し、主治医の意見や労働者の要望を勘案し、具体的な支援内容を検討する
③会社が「両立支援プラン」を作成・実行する
※周囲の同僚や上司等へ、必要な情報に限定したうえで可能な限り開示し、理解を得ながら進める
※休業が必要な場合は、あらかじめ休業可能期間や職場復帰手順等を労働者へ情報提供したうえで休業手続きを行い、疾病が回復した際には、配置転換も含めた職場復帰可否を判断し、「職場復帰支援プラン」を策定する

また事業主には、事前の環境整備が望まれます。
●基本方針等の表明と労働者への周知
・両立支援の必要性や意義を共有し、両立しやすい職場風土を醸成する
●研修等による意識啓発
・すべての労働者向けや管理職向けに実施する
●相談窓口等の明確化
・労働者からの申出が原則のため、労働者が安心して相談・申出を行えるようにする
●制度・体制等の整備
・時差出勤・短時間勤務・時間単位有休・在宅勤務等の制度を検討・導入する
・支援の申し出を受けた場合の対応手順・関係者役割を整理する
・本人の同意を得た上で、関係者間の円滑な情報共有のための仕組みを作る 等

厚生労働省のホームページ「治療と仕事の両立支援ナビ」では、ガイドラインや取り組み事例等が掲載されています。

(山田)

労働者名簿

2025.11.28.

労働者名簿は、労働基準法により調整し必須事項を記入することが定められていますが、労働基準監督官の監督指導等にて記載漏れ等の指摘を受けることがありますので、法令でどのように定められているのか、おさらいします。

①会社単位ではなく事業場単位で作成します。事業場が複数ある会社は、それぞれの事業場で作成が必要です。

②日雇労働者を除き、すべての労働者が作成の対象です。

③必須事項は以下のとおりです。
・氏名
・生年月日
・履歴
 ※最終学歴や主な職歴(期間と業務)について記載
・性別
・住所
・従事する業務の種類(労働者が常時30人未満の事業は不要)
・雇入れの年月日
・解雇または退職の年月日とその事由
・死亡の年月日とその原因

④変更があった場合は、遅滞なく訂正します。

⑤縦書きや横書き等、様式は限定されておらず、直ぐに写しが提出できる状態であればデータで管理することも可能です。

⑥退職の日から起算して3年間(法令により5年間のところ、当分の間は3年間)保存が必要です。

年次有給休暇管理簿・労働者名簿・賃金台帳を併せて調整することも認められています。

管理監督者や副業・兼業の労働者等が漏れている、履歴や退職者情報等が漏れている、情報が更新されていない、保存期限の到達前に破棄してしまっているといったことがありますので、再確認していただくと良いと思います。

(山田)

 
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