社労士コラム

2020年06月

企業内労働組合のメリット・デメリット

2020.06.30.

企業内労働組合とは、企業単位で所属従業員により組織された労働組合です。
日本国内にある企業内労働組合を企業規模別に見ると、
1000人以上規模の企業では65.3%以上、300~999 人規模が13.3%、
100~299 人規模が6.8%(令和元年労働組合基礎調査)となっており、
企業規模が大きいほど、労働組合が組織されていることがわかります。

企業労働組合の目的は、端的にいうと労働協約の締結にあると言えます。

労働協約とは労働組合と使用者の間で
組合員の賃金、労働時間、休日、休暇等の労働条件や団体交渉のルール、
組合活動等の事項について交渉を行い、その結果を書面にし、
両当事者が署名又は記名押印したものを労働協約といいます。(労働組合法第14 条)

この労働協約は、労働者と使用者が合意して個々に結ぶ労働契約や、
最終的に使用者が決めることができる就業規則とは区別され、
これらに優先して、労働者及び労働組合と使用者の関係を規律する効力が
与えられています。
労働協約というと、労働者の労働環境を維持確保するものと思われがちですが、
使用者にとっても、労働協約が有効期間中は企業の平和が維持され
労使関係が安定することになるので、労使双方にとってメリットがあるといえます。

しかし、労働組合との団体交渉は簡単に進むものではありません。
労働組合は労働者の労働環境の改善を要求しますが、
それをすべて受入ていたら企業経営は成り立ちません。
使用者側もそれに対抗すべく主張した場合、
団体交渉における交渉態度を非難されたり、
組合員に対する不利益取扱いや
労働組合に対する支配介入の指摘を受けるかもしれません。
また、労働組合との妥結点が見つからず
交渉に時間ばかりがかかるというデメリットもあるといえます。

このように、企業内労働組合のメリット・デメリットを把握した上で、
労働組合との適切な距離を保ち、関係を築いて行く必要があるでしょう。
【参照】厚生労働省 労働組合 / 労働委員会
【参照】東京都TOKYOはたらくネット労働協約の手引き

(松原)

労働保険事務組合の存在意義とメリット・デメリット

2020.06.30.

労働保険事務組合とは、
事業主が行うべき労働保険の事務処理を、その事業主の委託を
受けて行うことについて、厚生労働大臣の認可を受けた
中小事業主等の団体のことをいいます。
多くは、事業協同組合や商工会などが、その事業の一環として
行っています。

労働保険料の申告・納付等の労働保険事務を事業主に代わって
処理しますので、中小事業主の事務処理の負担が軽減されるとともに、
労働保険の適用促進や労働保険料の適正な徴収を図ることが可能となります。

労働保険事務組合に加入することについては、次のようなメリット・
デメリットがありますので、参考にしてみてください。

(メリット)
・労働保険料の申告・納付等の事務処理負担を軽減できる
・労働保険料の額にかかわらず、労働保険料を3回に分割納付できる
※労働保険事務組合に委託していない場合は、概算保険料額が
40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ
成立している場合は20万円)を超えないと分割納付することが
できません)
・労災保険に加入できない事業主や家族従事者なども特別加入することができる

(デメリット)
・労働保険事務組合への委託手数料がかかる

なお、労働保険事務組合に委託するには、常時雇用する労働者数の制限があり、
また委託できない事務もありますのでご注意ください。
詳細は、厚生労働省ホームページに掲載されておりますので、宜しければ
ご確認ください。
〈参考〉厚生労働省 労働保険事務組合制度

(金子)

派遣労働者の社会保険・労働保険の取り扱いについて

2020.06.24.

派遣労働者の社会保険・労働保険は、派遣元が適用事業所になっていれば、
常用型・登録型を問わず雇用関係のある派遣元事業所で適用されます。
派遣労働者の社会保険・労働保険の加入要件は、一般の労働者と同じです。

常用型派遣は、派遣元が常用雇用している労働者の中から労働者派遣をするものをいいます。
つまり、派遣期間に関係無く、派遣元で社会保険や労働保険に加入させることになります。

登録型派遣は、派遣元が派遣労働を希望する人(の氏名・希望業務・スキル等)を登録しておき、
実際に派遣先に労働者を派遣する際に、その人と有期労働契約を結ぶものをいいます。
登録型派遣の場合、労災保険は労務を提供している間は誰でも適用されますが、
社会保険と雇用保険に関しては加入要件があり、
1週間の所定労働時間や派遣期間により加入させるか否かが変わります。

社会保険に加入させるか否かは、
大まかに、
(1)通常の労働者の所定労働時間及び所定労働日数が概ね3/4以上であるか、
(2)派遣期間が2ヶ月を超えるか、
がポイントになってきます。登録型派遣で特に重要になってくるのが(2)のポイントです。

仮に(1)の要件を満たしていても派遣期間が2ヶ月以内で、
ただ臨時的に雇用する場合であれば、
社会保険に加入させる必要はありません。
しかし、ただ臨時的に雇用するものであっても、
2ヶ月以内の契約を定めて雇用するものを、
契約期間経過後も引き続き雇用する場合は、
常用的雇用関係となったとして社会保険に加入させる必要があります。
【参照】適用事業所と被保険者

雇用保険に加入させるか否かは、
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であるか、
(2)派遣期間が31日を超えるか、
がポイントになります。こちらも(2)のポイントが重要になってきます。

仮に(1)のポイントを満たしていても派遣期間が31日以内で、
臨時的に雇用する場合であれば、加入させる必要はありません。
しかし、31日以内の契約を定めているものを
契約期間経過後も引き続き雇用する場合は、
常用的雇用関係となったとして雇用保険に加入させる必要があります。
【参照】雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!

すでに社会保険や雇用保険に加入しているものの場合、
契約期間が満了した時の社会保険や雇用保険の手続きにも注意が必要で、
次のように示されています。

社会保険の場合、
派遣就業にかかる一の雇用契約の終了後、最大1ヶ月以内に、
同一の派遣元事業主のもとで派遣就業にかかる次回の雇用契約(1ヶ月以上のものに限る。)
が確実に見込まれるときは、使用関係が継続しているものとして扱われ、
被保険者資格は喪失されない[平成14年4月24日付 保保発第0424001号]
雇用保険の場合、
1週間の所定労働時間が20時間以上となる労働条件に復帰することを前提として、
臨時的、一時的に1週間の所定労働時間が20時間未満となるとき、
最後の雇用契約期間の満了日から1 か月程度経過時点において
その後概ね2 か月程度以内に1 週間の所定労働時間が2 0 時間以上
となる労働条件での次の派遣就業が開始されることが確実である場合は
被保険者資格を喪失させない[雇用保険に関する業務取扱要領(令和2年4月1日以降)]
また、
派遣元は、労働・社会保険の適用手続きを適正に進め、
労働者派遣前に、後であっても速やかに手続きを行なうこと[派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針第2の4]

このように、特に登録型派遣の労働者と労働契約を結ぶ際は、
派遣期間や派遣期間満了後も他の派遣先へ派遣予定があるのか、
また次の派遣期間が始まるまでのインターバルはどのくらいあるかなどよく確認し、
社会保険や労働保険の得喪手続きをする必要があるでしょう。
【参照】○「派遣労働者に対する社会保険適用の取扱いについて」の一部改正について〔厚生年金保険法〕

(松原)

派遣労働者の労務管理について

2020.06.22.

派遣労働者を受け入れる場合、その労務管理についての責任は、
派遣元と分担して負うことになります。

労働契約の締結や賃金の支払等、労働関係法令に基づく労務管理は、
原則として雇用契約を結んでいる派遣元が担いますが、実際に勤務
しているのは派遣先ですので、労働現場でこそ行うべき労務管理も
あります。主なものは次のとおりです。

(1)労働者派遣契約に則した勤務状況になっているかの確認
(2)労働時間の適正な把握・派遣元の36協定の把握
(3)安全管理者・衛生管理者の選任等、安全衛生管理体制の確立
   (派遣労働者を含めて算出した常時使用労働者数に応じて選任)
(4)現場に則した安全衛生を確保するための調査・措置・教育・特殊健康診断の実施

とはいえ、完全に分担して労務管理を行えるものではないので、
派遣労働者の労働条件の確保を図るため、派遣元・派遣先双方が、
適宜必要な情報提供を行い、取り組んでいくことが重要でしょう。

トラブルが発生した場合も同様です。
派遣先で労働者からの苦情を受けた場合には、労働者派遣契約で
あらかじめ定められた派遣先責任者が、派遣元責任者と連携を取りながら
対処していくことが必要です。
もちろん、苦情を申し出たことを理由に、その労働者に対して不利益な
取扱いをすることは禁止されています。

なお、2020年4月1日より、改正労働者派遣法が施行され、
派遣労働者に対する同一労働同一賃金の制度が適用されました。
雇用形態による不合理な待遇差をなくすための改正です。

派遣先では、派遣元が派遣労働者の待遇を決定する際に必要となる
情報を提供することや、派遣元からの求めに応じた教育訓練の実施・
福利厚生の利用等の面で、通常の労働者との差をなくすことが
義務付けられました。
この改正は、2020年4月1日をまたぐ労働者派遣契約にも適用
されますので、注意が必要です。
〈参考〉厚生労働省リーフレット「派遣先の皆様へ」(労働者派遣法改正関連)

派遣労働者を受け入れる際に取るべき措置についての詳細は、
厚生労働省が「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省告示)
出しています。
また、注意すべきポイントがわかりやすくまとめられたパンフレットも
公表されていますので、併せて確認されるとよいでしょう。
〈参考〉厚生労働省パンフレット「派遣社員を受け入れるときの主なポイント」

(金子)

社会保険及び労働保険 出向者の取り扱い

2020.06.12.

出向者についての社会保険・労働保険の取り扱いは、
保険の種類によって違いがあります。

そもそも出向とは、自社との雇用契約はそのままで
他の企業において勤務させるものであり、自社との
雇用契約を終了させて他の企業で新たに雇用契約を
締結する転籍とは区別されます。
転籍は、転職のときのように新しい会社と雇用関係を
結ぶことになるため、社会保険・労働保険の取り扱いについて
複雑な問題は生じませんので、ここでは、出向元と出向先両方
との雇用関係が生じる出向のケースについてみてみましょう。

●社会保険(健康保険・厚生年金保険)・・・基本的に賃金を支払う側で適用

出向元及び出向先それぞれと雇用関係があり、どちらか一方を
選択して適用することになりますが、実務上では賃金を支払う
側でその支払う賃金に基づいて保険料を納付します。
   
●労災保険・・・出向先で適用

現実に労務を提供するのは出向先なので、出向先の事業内容に
基づく保険料率で保険料を納付します。
実務上注意する点は、出向先で保険料申告の手続きをする際には、
出向元から支払われる賃金があればその金額も合計して保険料を
算出することです。

●雇用保険・・・生計を維持するために必要な主たる賃金を払っている側で適用

2つの雇用関係を有することになるため、支払う賃金額が多い方で
適用となり、その支払う賃金に基づいて保険料を納付します。
従って、出向先で支払われる賃金が多い場合には、出向元で資格喪失、
出向先では資格取得の手続き行うことが必要です。
従たる賃金を支払う側では適用されず、従たる賃金を合算して保険料を
算出する必要もありません。

社会保険や労災保険の手続きでは、出向元、出向先とで賃金データの
共有が必要となる場合がありますので、漏れのないように行いましょう。

(金子)

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