社労士コラム

2023年09月

年収の壁130万円_106万円_103万円

2023.09.29.

「年収の壁」は、主たる生計者の扶養の範囲で働く
パート就労者の稼得年収・就労意欲への制約の意味で、
一定の範囲で使われている表現と感じていましたが、
厚生労働省もこの表現を使用するなど
一般的な言葉になりつつあるようにも感じます。

政策としてこの「壁」への対応が示され、また年末調整を控えたこの時期は、
パート就労者からの質問や、パート就労者を扶養する人からの質問を
受ける機会も増えますので現状のルール概要を金額基準で整理します。
適切な事務処理・対応ができるようにしておくとよいでしょう。
詳細条件はリンク先サイトのとおりです。

▼年収130万円未満(被扶養者条件)(社会保険)
健康保険の被扶養者資格条件です。
130万円以上ですと被扶養者にはなりませんので
自身で国民健康保険に加入し保険料負担が発生します。
国民年金3号被保険者の資格条件でもありますので
配偶者に扶養されている場合は国民年金保険料負担も
発生しません。
・被扶養者とは(協会けんぽ)

▼年収106万円以上(加入条件)(社会保険)
従業員数101人以上の会社(特定適用事業所)で働く場合の
健康保険と厚生年金保険の加入条件です。
月額8.8万円が条件で、106万円は年額換算の数字です。
年収130万円未満であっても、この加入条件が優先ですので
健康保険の被扶養者となることも、
国民年金3号被保険者となることもできません。
・短時間労働者に対する社会保険の適用拡大(日本年金機構)

▼年収103万円以下(扶養控除・配偶者控除)(所得税)
所得税の扶養控除の条件です。年収103万円以下の対象親族を
扶養する人が所得税計算上控除を受けることができます。
・扶養控除(国税庁)
・配偶者控除(国税庁)

▼年収103万円超216万円未満(配偶者特別控除)(所得税)
所得税の配偶者特別控除の条件です。年収103万円超216万円未満の
配偶者を扶養する人が、所得税計算上控除を受けることができます。
・配偶者特別控除(国税庁)
・年末調整で適用を受けるとき(国税庁)

(藤代)

外国人を雇用した時の届出について

2023.09.22.

外国人の方を雇用、離職した際に、事業主は「外国人雇用状況の届出」の義務があり、
採用の際に氏名や言語などから外国人であると判断できるにも関わらず、届出なかった場合は罰則の対象となります。

在留資格が「外交」、「公用」、または特別永住者の方は届出の義務はありません。

届出の提出先は管轄のハローワークとなりますが、
雇用保険の被保険者となるか、非加入者となるかにより、提出期限と提出方法が異なります。

□雇用保険加入者の場合
提出期限は、雇入れ時は雇入れ月の翌月の10日まで、離職時は離職日の翌日から10日

雇用保険資格取得届・喪失届の用紙に必要事項を記載し、
雇用保険の手続きの際に同時に提出することができます。
提出期限も各雇用保険の手続きと同じです。

□雇用保険非加入者の場合
提出期限は、雇入れ時・離職時どちらも翌月の末日まで
外国人雇用状況届出書(様式第3号)を提出します。
https://www.mhlw.go.jp/content/001059771.pdf

雇用保険非加入者の場合は届出を忘れてしまわないように注意が必要で、
短期間のアルバイトでも届出は必要です。
留学生の方は原則就労が認められていないので、
ご本人から資格外活動許可の申請をし、就労可能な状態でないと雇入れできません。

また、外国人の方について、労働基準法や社会保険は本人の国籍に関わらず
適用されますので、国籍を理由に労働条件など、
日本人と差別しないような取扱が求められます。

参考:外国人雇用はルールを守って適正に
https://www.mhlw.go.jp/content/000603552.pdf

(斎藤)

妊娠中の女性が就労する場合の保護規定

2023.09.15.

男性の育児参画への取り組みが何かと話題に上がりますが、
女性が妊娠、出産を機に退職する割合も年々減少傾向にあることから
妊娠~出産まで就業を継続することが当たり前になっています。
就業中の妊産婦を保護する規定としては
主に男女雇用機会均等法、労働基準法で定められていますが
本日は、主に妊娠中の女性労働者に対し、
労働基準法で定められている母性保護措置についてご紹介します。

なお「妊産婦」とは、妊娠中及び産後1年を経過しない女性を指します。

(1)産前・産後休業(法第65条第1項及び第2項)
産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間
女性を就業させることはできません。

産前休業は女性が請求した場合、産後休業は必ず、就業させてはいけません。
ただし、産後6週間を経過し、女性が請求し医師が認めた場合には、就業させても差し支えありません。
なお、出産とは妊娠4ヶ月以上の分娩を指し、生産、死産を問いません。

(2)妊婦の軽易業務転換(法第65条第3項)
妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させなければなりません。

たとえば、外回りの営業職や現場職、立ちっぱなしの業務から、
オフィスでの事務業務に転換させるようなイメージです。
新たに軽易な業務を作り出す必要まではないとされています。

(3)妊産婦等の危険有害業務の就業制限(法第64条の3)
妊産婦等を妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。

詳細はこちらで紹介されています。
女性に優しい職場づくりナビ 妊産婦等の就業制限の業務の範囲

(4)妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限(法第66条第1項)
変形労働時間制がとられる場合であっても、妊産婦が請求した場合には、
1日8時間週40時間の法定時間を超えて労働させることはできません。

(5)妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限(法第66条第2項及び第3項)
妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働、又は深夜業をさせることはできません。

会社としては、色々気を使って対応しなければならなくて大変、と感じるかもしれませんが
妊娠中から産後まで、安心して働ける環境を提供することで
戦力を失わずにすむというメリットにもなると思います。
可能性がある会社では特に、一度おさらいしておくと安心です。

参考:
厚生労働省:女性労働者の母性健康管理等について

働く女性の心とからだの応援サイト:妊娠中の女性労働者への対応

(高村)

精神障害の労災認定基準

2023.09.08.

令和5年9月、精神障害の労災認定基準が改正されました。

精神障害の労災保険給付請求件数は年々増加してきており、審査の迅速化や効率化を図る必要性が生じ、今回の改正となったようです。
基本的な認定要件と改正された点を確認します。

【精神障害の労災認定要件】(下記①~③いずれも満たす場合)
認知基準の対象となる精神障害を発病していること
  疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂版(「ICD-10」)第Ⅴ章
  「精神及び行動の障害」に分類される精神障害であって
   器質性のもの及び有害物質に起因するものを除きます。
  また、心身症は認定基準対象の精神障害に含まれません。
認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること  
   ・発病前概ね6ヶ月の間に起きた業務による出来事を
    「業務による心理的負荷評価表」にあてはめて判断します。   
   ◇こちらのリンク◇後半の別表1に、心理的負荷評価表がございます。
  ・「業務による心理的負荷評価表」による「特別な出来事」に該当する
   業務起因の出来事があれば心理的負荷の総合評価を「強」とし
   それ以外の出来事についてはこの表の「具体的出来事」に当てはめ
   総合評価します。
業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

【今回改正された点】
1️⃣業務による心理的負荷評価表の見直し
  ・具体的出来事にカスタマーハラスメントや
   感染症等の病気や事故の危険性が高い業務への従事を追加など
  ・パワハラ6類型全ての具体例、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等を
   含むことや、一部しか示されていなかった具体例を明記
2️⃣精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
  ・悪化前おおむね6ヶ月以内に「特別な出来事」がなくとも
   「業務による強い心理的負荷」により悪化した場合、悪化部分について認定可能に
3️⃣医学意見の収集方法を効率化
  ・専門医3名の合議により決定していた事案について
   特に困難なものを除き1名の意見で決定できるよう変更

「業務による心理的負荷評価表」の具体例が増えました。この表をひと通り確認すると参考になります。

(前田)

定期健康診断の実施義務内容について

2023.09.01.

厚生労働省では9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、集中的・重点的に啓発が行われています。
そこで今回は、会社に実施義務のある健康診断の中の1つである定期健康診断について、実施義務内容をご案内します。

定期健康診断は、常時使用する労働者に、1年以内ごとに1回の実施が義務付けられています。
(常時使用する労働者については2021/5/7のコラムをご覧ください)

健康診断実施後は、下記取組が必要です。
①結果の記録
健康診断個人表を作成し、5年間保存します。

②結果についての医師からの意見聴取
異常所見のある労働者について、医師に意見を聴きます。
労働者数が50人未満の事業場は産業医の選任義務がないため、医師との接点がない場合もあると思いますが、地域産業保健センターでは産業医・保健師が配置されており、意見聴取等を受けることができます。

③実施後の措置
医師の意見を勘案し、労働者の健康を保持するために必要と認めるときは、下記等の適切な措置を講じます。
・労働者の就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等
・作業環境測定の実施
・施設・設備の設置や整備
・医師の意見の衛生委員会等への報告   等

④結果の労働者への通知
健康診断の結果は、労働者へ通知します。

⑤結果の所轄労働基準監督署長への報告
常時50人以上の労働者を使用する事業場の場合は、遅滞なく、定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長へ提出します。

その他、健康診断の結果、健康保持に務める必要がある労働者への医師・保健師による保健指導が努力義務とされています。

実施漏れがないかどうか、ご確認いただければと思います。

職場の健康診断実施強化月間

(山田)

エキップオリジナルサービス
給与計算改善コンサルティング
RECRUIT
給与計算の最強チェックリスト
濱田京子著 出版書籍
濱田京子コラム
社労士コラム

お電話でのお問い合わせ

03-5422-6550

受付時間: 平日 9:00 〜 17:00

メールでのお問い合わせ