社労士コラム

2021年09月

脳・心臓疾患の労災認定基準が改正されました

2021.09.27.

令和3年9月、脳・心臓疾患の労災認定基準が改正されました。
前の改正から20年が経過しており、働き方の変化や最新の医学的知見を踏まえたうえで検討された内容となっています。

具体的な変更ポイントは以下4点です。

①労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化
発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、
1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について
業務と発症との関係が強いと評価できることを示していました。
改正後は、上記の時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には、
「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと評価できることを明確にしました。

②過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し
これまでは、拘束時間の長い業務、出張の多い業務、作業環境(温度変化や騒音)なとの要因がありましたが
改正後は、休日のない連続業務、作業間インターバルの短い業務、等が新たに追加されました。

③短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化
発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合、
業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合、等の例が示されました。

④対象疾病に「重篤な心不全」を追加
これまで心不全症状は、対象疾病の「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱っていましたが
心停止と心不全は別の病態であることから、新たな項目を設けました。

こうした動きを確認しつつ
業務環境を整えて、労災の発生を未然に防いでいけるとよいですね。

参考:厚生労働省 リーフレット
   厚生労働省 脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました

(高村)

2021年の年末調整

2021.09.24.

昨年の年末調整では税制改正による基礎控除、給与所得控除などの見直しにより
控除申告書の様式が大幅に変更されました。
2021年の年末調整の主な変更点は以下のとおりです。

1)税務関係書類における押印義務の見直し
給与所得者の扶養控除等申告書など従業員から提出される年末調整関係書類について押印が不要となりました。

2)年末調整申告書等を電磁的方法で提供する場合の税務署長の承認廃止
これまでは、年末調整申告書等を従業員から電磁的方法で提供(電子化)する場合、
事前に税務署へ申請書(※)を提出し承認を受ける必要がありましたが、
下記の申告書に関して、2021年4月1日以降に提出する分から事前承認が不要となりました。
 ※「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」

•給与所得者の扶養控除等申告書
•従たる給与についての扶養控除等申告書
•給与所得者の配偶者控除等申告書
•給与所得者の基礎控除申告書
•給与所得者の保険料控除申告書
•給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
•所得金額調整控除申告書
•退職所得の受給に関する申告書
•公的年金等の受給者の扶養親族等申告書

【国税庁:年末調整がよくわかるページ(令和3年分)】
【国税庁:源泉所得税改正のあらまし(令和3年4月)】

これまでは申請書を提出した翌々月から運用可能となるため、
早めの準備が必要等タイミングが合わず電子化への機会を逃していた会社もあるかもしれませんが、
2021年は年末調整の電子化に取り組むいい機会ではないでしょうか。
(菊沢)

新型コロナウイルス感染者の傷病手当金申請について

2021.09.17.

傷病のため就労できず給与が受けられないとき健康保険の傷病手当金を
受給することができますが、新型コロナウイルス感染のため就労できない場合も
他の傷病と同様に傷病手当金を受給することができます。自宅療養期間も対象になります。

傷病手当金の申請用紙には
医師が労務不能であることを証明する欄が設けられていますので、
通常は傷病手当金申請用紙を病院に持参し証明してもらうことで
申請書類が整います。
ところが新型コロナウイルス感染では自治体や症状によって療養の形態がまちまちで
自宅療養だったために医師の証明が用意できなかったり、
自宅療養開始から数日経過してから受診したために医師の証明は受診以後の期間だったり、
医師の証明は無いけれど保健所発行の療養証明書はあったり、
といった事象が発生しています。

健康保険組合ではこうした場合には個別に審査をしていますので
必要書類等について相談するとよいでしょう。

(藤代)

医療費の負担について

2021.09.10.

怪我や病気など病院でかかる医療費を誰が負担するかについてまとめてみました。

詳しくはケースごとに判断が必要ですが、おおむね次のようになります。
■お仕事中や通勤途中等の場合
 →労働者災害補償保険
■第三者行為による場合
 →当該第三者
■その他(保険証(医療保険の被保険者証)を使用するケース)
 →健康保険などの医療保険者と本人がそれぞれの割合分を負担
(6歳以上70歳未満の場合、医療保険者7割・本人3割)

[労働者災害補償保険の判断]
業務に関連して負傷した場合とは、厳密には、業務遂行性と業務起因性が認められることが判断基準になります。けがの場合は比較的判断しやすいですね。
通勤途上の場合は、通勤と言えるかどうかの判断が必要です。

[第三者行為の例]
・車同士の事故
・暴力行為による傷害
・他人のペットに咬まれた
・自損事故車に同乗して怪我を負った
・スキー場での他人との接触事故
・飲食店等での食中毒

第三者行為の場合、ひとまず医療保険の被保険者証を使って受診しても良いのですが、その場合は健康保険組合等の医療保険者に「第三者行為による傷病である届出書」(名称は保険者によって異なる)を提出する必要があります。(医療保険者が負担した分を当該第三者に請求するため)

負担者が間違っていて後で判明すると、医療費の精算など手続が煩雑になります。
判断に迷うケースは、早めに労働基準監督署や医療保険者に相談して頂くと安心です。
(前田)

複数の社会保険適用事業所で勤務する場合の手続き

2021.09.03.

社会保険に加入している方が、副業等により他の社会保険適用事業所でも勤務することになり、その事業所でも社会保険の加入基準を満たした場合は、「二以上勤務者」に該当することになります。

新たに勤務することになった事業所では、資格取得届を保険者に提出します(通常の手続きと同様です)。

二以上勤務者は、所属する複数の事業所の中から主たる事業所を選択し、届出を行います。選択する上でのルールはありませんので、どの事業所を主たる事業所とするかは勤務者が自由に選択できます。
主たる事業所を選択するのは、どの日本年金機構事務センター・健康保険組合が事務を行うかを決めるためです。

届出先は、主たる事業所が協会けんぽか健康保険組合かで異なります。
●協会けんぽ :事務センターへ提出
●健康保険組合:健康保険組合と事務センターへそれぞれ提出

二以上勤務者が届出を行うと保険証の番号が変わり、主たる事業所宛に新しい保険証が発行されますので、二以上勤務に該当した日以降は旧保険証を使用しないようにしましょう。
特に、保険者が変わる(協会けんぽ→健康保険組合、健康保険組合→協会けんぽ、A健康保険組合→B健康保険組合)場合、二以上勤務該当後に旧保険証を使用すると、保険者が負担した療養費等の返金を求められることになります。(協会けんぽ→協会けんぽの場合でも、返金を求められることがあります。)
返金を求められた場合は、旧保険者・新保険者と二以上勤務者との間で精算手続きを行うことになります。

以下は、それぞれの事業所の事務手続きについてです。

算定基礎届・月額変更届・賞与支払届は、それぞれの事業所から届出を行います。
主たる事業所の保険者が事務を行うため、従たる事業所は、二以上勤務者の書類を主たる事業所の保険者へ届け出ます。

また、二以上勤務者は保険料の算出方法が通常と異なります。保険料額が決定すると、保険者からそれぞれの事業所に通知書が送付されます。給与から控除する保険料は、通知書の金額を確認しましょう。

二以上勤務者は、他の勤務者と事務手続きが異なる部分がありますので、抜け漏れ等がないよう注意が必要です。

(山田)

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