社労士コラム

2025年10月

事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱い

2025.10.30.

「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いが恒久化されます。

年収130万円以上となることで、国民年金・国民健康保険に加入するため、保険料を避け、就業調整してしまう事案について、パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても連続2回までは、事業主がその旨を証明することで、引き続き被扶養者認定が可能となる仕組みです。
令和5年より始まったこちらの「130万円の壁」への対応は、当初、「当面の対応策」としていましたが、「恒久的な取り扱い」に変更になりました。

運用についてはこれまでと同様です。
対象者は社会保険の被扶養者の方、新たに被扶養者としての認定を受けようとしている方(フリーランスや自営業者など特定の事業主と雇用関係にない場合は、措置の対象となりません)。
「一時的な収入変動」と認められる具体的な上限額については示されておらず、各保険者において雇用契約書等も踏まえつつ、増収が一時的なものかどうか確認することになります。
一時的な収入増加の要因としては、主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当等が想定され、「一時的な収入変動」に該当する主なケースとしては、当該事業所の他の従業員が休職・退職したことにより、当該労働者の業務量が増加したケースや当該事業所における業務の受注が好調だったことにより、当該事業所全体の業務量が増加したケースなどが該当し、労働契約における所定労働時間・日数が増加した場合など、今後も引き続き収入が増えることが確実な場合においては、一時的な収入増加とは認められません。

社会保険の被扶養者の要件は、収入要件だけではないため、その他の要件を満たしていないことにより、被扶養者から外れることも考えられます。その場合は、ご加入の健康保険組合等に対して、被扶養者から外れることとなった理由を確認するとよいでしょう。

厚生労働省「130万円の壁」リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/001162154.pdf

(齋藤)

障害者雇用率の引き上げと雇用者数算定方法

2025.10.24.

民間企業の障害者雇用の法定雇用率は、
現在2.5%となっていますが、
2026年7月1日からは2.7%へ引きあがり、
対象の会社規模は40.0人以上から37.5人以上へ拡大することとなります。

雇用義務のある障害者数は、
「常時雇用する労働者数」×法定雇用率(2.5%または2.7%)
(小数点以下切り捨て)で計算することができます。

「常時雇用する労働者数」の算定対象となる労働者は
障害の有無に関わらず、雇用期間の要件
(期間の定めのない者や1年を超えて引き続き雇用される見込みがある者など)
を満たす全労働者について、週所定労働時間に応じて次のようにカウントします。

・1.0人カウント:週所定労働時間が30時間以上の労働者
・0.5人カウント:週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
・カウントしない:週所定労働時間が20時間未満の労働者

週所定30時間以上の労働者が120人、
週所定20時間以上30時間未満の労働者が10人の場合、
雇用義務のある障害者数は3人となります。

また、「雇用障害者数」の算定方法は、
「常時雇用する労働者数」と同じ算定方法に加えて、
・重度身体障害者・重度知的障害者は2倍の人数をカウント、
・重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者で
週所定労働時間が10時間以上20時間未満の場合は0.5人カウント
というルールがあります。
週所定労働時間が30時間以上の重度身体障害者を2人雇用している場合は、
雇用障害者数としては4人雇用していることになります。

法定雇用率の引き上げに向けて、
雇用人数を確認しておくとよいと思います。

(斎藤)

11月は「過労死等防止啓発月間」です

2025.10.17.

厚生労働省では11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、
過労死等をなくすためのシンポジウムやキャンペーンなどの取組を行います。
この月間は「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、
過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、関心と理解を深めるため、毎年11月に実施しているものです。

厚生労働省「11月は過労死等防止啓発月間です」

過労死等の定義とは以下のように定められています。
(1)業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
(2)業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
(3)死亡には至らないが、これらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害

令和6年「過労死等の労災補償状況」によると、

脳、心臓疾患に関する労災補償状況は
支給決定件数は241件で前年度比25件の増加
※うち死亡件数は前年度比9件増の67件

精神障害に関する労災補償状況は
支給決定件数は1,055件で前年度比172件の増加
※うち未遂を含む自殺の件数は前年度比9件増の88件

有休取得の推奨などライフワークバランスの充実を目標に
様々な取り組みは行っているところではありますが、
件数だけ見ると、年々増加惟傾向にあります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59039.html

今年の過重労働解消キャンペーンとしては
・使用者団体や労働組合に対し、長時間労働削減に向けた取組に関する周知・啓発等について協力要請を行い、労使の主体的な取組を促す
・積極的な長時間労働解消のための取り組み事例の情報収集
・過去に実際に過労死が発生した事業所など各情報に基づく重点監督の実施
・過重労働解消相談ダイヤルの開設
・過重労働解消のためのセミナー開催
等を行うことと発表しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign_00004.html

この機会に、自社の労働状況を改めて見直し
長時間労働の削減に向けた取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

(高村)

退職後の年金手続きについて

2025.10.10.

退職後の年金手続きは、退職後の状況(再就職する、扶養に入る等)や退職者の年齢によって異なります。
退職者から退職後の手続きについて問合せを受けることもあると思いますので、年齢別に手続きをご案内します。

①60歳未満
●厚生年金保険の適用事業所に再就職する場合
原則、厚生年金保険に加入します。
手続きは、再就職先の会社が行います。

●扶養家族になる場合
国民年金に加入し、第3号被保険者となります。
手続きは、家族が勤務する会社が行います。

●上記に該当しない場合
国民年金に加入し、第1号被保険者となります。
手続きは、ご本人または世帯主が住所地の市区役所にて行います。「マイナポータル」からマイナンバーカードを利用して、電子申請することも可能です。

②60~64歳
●厚生年金保険の適用事業所に再就職する場合
原則、厚生年金保険に加入します。
厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受給する場合は、支給額が調整される場合があります。さらに、雇用保険法の高年齢雇用継続給付を受ける場合は、老齢厚生年金の一部(最高で標準報酬月額の4%)が支給停止されます。

●上記に該当しない場合
原則、手続きはありません。
65歳になる前に年金を受け取りたい場合は、繰上げ受給の請求を行います。ただし、ハローワークで求職の申込みをしたときは、失業給付の受給有無に関係なく、一定期間は老齢厚生年金が全額支給停止されます。
※受給資格期間が10年未満の場合と満額(40年間保険料納付分)の老齢基礎年金が受けられない場合は、国民年金の任意加入が可能です。手続きは、ご本人が住所地の市区役所か年金事務所にて行います。

③65歳以上
●厚生年金保険の適用事業所に再就職する場合
70歳未満の場合は原則、厚生年金保険に加入します。70歳以上の場合は70歳以上被用者に該当しますが、被保険者ではないため保険料負担はありません。手続きはいずれも、再就職先の会社が行います。
老齢厚生年金を受給する場合は、支給額が調整される場合があります。

●上記に該当しない場合
年金を受け取りたいタイミングで、自宅に送付されている「年金請求書」を年金事務所(加入期間がすべて国民年金第1号のみの場合は住所地の市区役所)へ提出します。
75歳まで繰下げ受給が可能なため、繰り下げる場合は手続きはありません。
※受給資格期間が10年未満の場合のみ、国民年金の特例任意加入が可能です。手続きは、ご本人が住所地の市区役所か年金事務所にて行います。

日本年金機構からは、退職者向けに年金手続き等を説明したパンフレットが公開されています。
退職後の年金手続きガイド

退職後の健康保険手続きは、こちらの過去のコラムをご覧ください。

(山田)

2025年(令和7年)分 年末調整について

2025.10.03.

年末調整の準備を始める時期となりました。
2025年(令和7年)の年末調整は、令和7年度税制改正の施行により、
基礎控除や給与所得控除などの見直しが行われます。
主な変更点は以下のとおりです。

1)基礎控除・給与所得控除の見直し
基礎控除は58万~95万円に拡大(所得に応じて適用額が変動)
給与所得控除の最低額は65万円に引き上げ
※給与収入160万円以下は所得税がかからなくなります。
 従来の「103万円の壁」が「160万円」に拡大したイメージです。

2)扶養控除・配偶者控除などの所得要件緩和
扶養親族に対する所得要件が48万円以下 → 58万円以下に引き上げ
※これまで控除対象外だった「年収103万~123万円以下」の家族が控除対象となる場合あり
勤労学生控除の所得要件も75万円以下 → 85万円以下に緩和

3)特定親族特別控除の新設
19歳以上23歳未満の親族が対象
合計所得金額が58万円超~123万円以下であれば、段階的に特別控除を適用
※控除を受けるためには「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要

4)住宅借入金等特別控除の「調書方式」導入
金融機関等が税務署に情報提供し、国税庁から本人に「年末残高情報」が提供される仕組み
※「調書方式」を利用すると、これまで必要だった金融機関からの年末残高証明書の提出が不要となります。

国税庁 年末調整がよくわかるページ(令和7年分)
改正の影響で申告内容が変わる従業員が多いと想定されるため、早期に説明・案内を行うことが大切です。
(菊沢)

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