社労士コラム

2022年01月

業務災害と通勤災害の違い

2022.01.31.

業務中や通勤途中にケガをしたり病気にかかった時は、労災保険から給付を受けられます。
業務災害と通勤災害で給付の内容はほぼ同じですが
細かな違いがありますので、簡単に説明したいと思います。

業務災害が起こった場合、
事業主は労働者の治療にかかる費用負担や休業補償等の義務を負うことが
労働基準法で定められています。
(労働基準法第75条~80条)

一方で、通勤災害については、労働基準法上での補償義務はありません。

このことから、以下のような取り扱いの違いが発生します。
①業務災害は自己負担金がない(通勤災害は200円の自己負担金がある)
②業務災害の待期3日間について事業主が休業補償を行う義務がある(通勤災害にはない)
③業務災害の休業期間中とその後30日間は解雇制限がある(通勤災害にはない)
④業務災害の時に受ける給付には療養補償給付、休業補償給付等、「補償」という名称が使われる(通勤災害は療養給付、休業給付、、となる)

また、単純に業務災害と通勤災害では、請求に使用する様式が異なります。
細かいですが、労働保険料のメリット制が適用されている事業所では、
通勤災害が起こっても労災保険率には影響がないという点も違いとして挙げられます。

事故のタイミングや場所によっては、業務災害なのか通勤災害なのか、悩むケースもあるかもしれません。
労働者への影響も少なからずありますので、
事実確認をしっかり行い、不明点は請求前に問い合わせるなどして、よく確認するのがよいでしょう。

参考:東京労働局「労災保険とは」

(高村)

パワハラとはどんなものを指すのか

2022.01.28.

既に大企業では令和2年6月から義務化されていますが、中小企業でも本年4月1日からパワーハラスメント防止対策が義務化されます。
今回は職場のパワハラってどんなものか確認してみましょう。

■職場におけるパワーハラスメントとは?
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり職場環境を悪化させる行為をいいます。

上司や先輩からだけでなく、同僚や部下であっても状況次第ではパワーハラスメントに該当するケースもあります。(その者の協力が得られなければ業務の円滑な遂行が困難であったり、集団による行為の場合など)
 
■どんな言動が該当するのか?
職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて行われる次のような言動
(これらに限定される訳ではないですが、代表的な類型とされています。)
 ① 身体的な攻撃(暴行・傷害)
 ② 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
 ③ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
 ④ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
 ⑤ 過小な要求(業務上の語彙理性無く能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
 ⑥ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入る事)

このような事が起きないように事業主の方に対策して頂くとともに、お互いに気をつけあって、気持ちよく働けると良いですね。

(前田)

離婚後の子の所得税法上の扶養控除

2022.01.21.

離婚後に子の養育費を支払っている場合は、子の親権者でなく、同居していなくても、所得税法上の扶養控除の対象とすることができる場合があります。

扶養親族の要件にある「所得者と生計を一にする親族」の「生計を一にする」には、同居していなくても、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合が含まれます。

離婚後は、
①扶養義務の履行として
②子が成人に達するまでなど一定の年齢等に限って支払われる場合、
養育費を支払っている期間は、扶養控除の対象として差し支えないとされています。

一括で養育費を信託銀行に預け、信託銀行から定期的に子へ給付する養育信託を利用する場合も、子へ給付されている間、各年の扶養控除の対象として差し支えないとされています。

ただし、扶養控除は元夫・元妻のうちどちらか一方しか認められませんので、あらかじめどちらの扶養控除の対象とするかを決めておくと良いでしょう。

なお、健康保険の扶養認定では、被保険者により主として生計を維持され、子の年間収入を上回る金額を送金している等、税法上の扶養控除対象と要件が異なりますので、混同しないよう注意が必要です。

国税庁 生計を一にするかどうかの判定(養育費の負担)

(山田)

健康保険 任意継続被保険者手続きについて

2022.01.14.

健康保険には、会社を退職した後も一定の要件を満たしていれば
それまで加入していた健康保険に継続して加入できる任意継続制度があります。

(任意継続制度の要件)
・資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること
(退職ではなく、勤務時間・日数の減少により健康保険の資格を喪失した場合も該当)

・資格喪失日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること
※協会けんぽの場合は、労働者の住所地を管轄する協会けんぽ支部へ提出する
(会社の管轄ではない)。

基本的に労働者本人が行う手続きであるため、
会社が積極的に行わなければならないものではありませんが、
任意継続を希望する労働者には、期限や提出先等を案内してあげると
手続きもスムーズ進められるのでよいのではないでしょうか。

なお、被保険者証は変わるので、従来使用していたものは資格喪失日以降
速やかに返却する必要があります。
協会けんぽの場合、勤務していた会社等での資格喪失手続きが行われた後に
新しい被保険者証が発行されますので、
特に資格喪失手続きを紙申請で行う場合は被保険者証が発行されるまで
時間がかかると言われています(2~3週間位)。
発行までの期間を短縮(1週間位)するには、

・資格取得申出書の任意記載欄となっている
「健康保険被保険者資格喪失証明欄(事業主記入用)」に事業主が証明する

・退職証明書、雇用保険の離職票の写し等事業主または公的機関が作成した
資格喪失の事実が確認できる書類を申請書に添付する

のいずれかを行うことで可能となります。
被保険者証は早く手元にほしいという労働者も多いと思いますので、
本人の希望に応じて対応してあげるとよいでしょう。

先に記載したとおり、任意継続被保険者の手続きは労働者本人が行うものです。
ただ、なかには会社が行ってくれると思っている労働者の方もいるようです。
任意継続の意向がある労働者に対しては、
資格取得の手続きだけでなく、保険料の払込み、各種変更の手続き、
資格喪失手続き等本人が行うものであることを事前に案内しておくと安心です。

(参考)日本年金機構 「任意継続とは

(金子)

健康保険傷病手当金の見直しに関する請求権消滅時効の取扱い

2022.01.07.

1月1日に施行された健康保険法等の一部改正により傷病手当金の支給期間が通算化され、
傷病手当金の支給期間が暦日1年6ヶ月から通算1年6ヶ月となります。

一方で、健康保険給付を受ける権利は、受けることができるようになった日の翌日から2年で時効になります。
時効の起算日は「労務不能であった日ごとにその翌日」です。

消滅時効の取扱いが、追加で公表されたQ&Aに出ていました。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220104S0060.pdf

【例】待期期間が完成した令和4年9月1日から9月 30日までの労務不能期間について、
   令和6年9月 15 日に傷病手当金の請求があった場合

○ 令和4年9月1日から9月 14 日までの期間については、
 請求権の消滅時効が完成しているため、傷病手当金の支給は行わない。
○上記のケースにおいては、令和4年9月1日(支給を始める日)を基準として
 傷病手当金の支給額を算定するとともに、
 同月 15 日(支給を始めた日)を基準として総支給日数を算定し、
 同月 15 日から 30 日まで支給する

また、消滅時効により傷病手当金が支払われなかった場合、
支給期間の通算はどのような取扱いになるかについて、

○ 消滅時効により傷病手当金が支給されない場合には、支給期間は減少しない。
○ なお、消滅時効により傷病手当金が一度も支給されていない場合については、
  実際に傷病手当金の支給が開始された日を「支給を始めた日」とし、
  当該日において支給期間を決定する。

消滅時効は労務不能であった日ごとですが、
消滅時効により支給されなかった期間については、
支給期間が減少しないというのがポイントです。
この傷病手当金の通算化は同一の傷病について適用されますので
一度復帰した従業員だけでなく、転職者など保険者が異なっている場合でも該当します。
色々なケースが想定されますので、支給手続きや従業員への案内には慎重に行う必要があります。

【参考:全国健康保険協会 健康保険法等の一部改正に伴う各種制度の見直しについて】

(菊沢)

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