2025.12.19.
労災事故に遭った従業員が働けず、休業が必要になる場合があります。
①業務上の事由や通勤による負傷・疾病で療養するため、②労働することができず、③賃金が受けられない、という3要件を満たすと休業4日目以降について労災保険より休業補償等給付が支給されます(労災保険法第14条)。
では、最初の3日間(待期期間といいます)は補償がないのかというと、業務災害の場合には労働基準法にて事業主に補償の義務があります(労基法第76条)。
休業補償は、まず労基法76条で事業主に補償の義務があり、労災法14条により4日目以降は労災保険の給付があることから、労基法84条「この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる」として、事業主の補償責任が労災保険に委ねられているという構造になっているのです。
ちなみに通勤災害は労災法の規定で、労基法には規定がないので、事業主に待期期間の補償の義務はありません。
そうなると「初日はどこから数え、待期3日間はいつまでか」が重要になります。
これは労災が起こった時刻も関係していて、
(1)所定労働時間中に発生、所定労働時間中に一部休業して受診=労災事故発生日を初日
(2)所定労働時間中に発生、所定労働時間中は就業した後に受診、翌日から休業=労災事故発生翌日を初日
(3)所定労働時間外(残業中)に発生して受診、翌日から休業=労災事故発生翌日を初日
などのパターンがあります。
待期期間中、事業主は平均賃金の60%の補償を行う義務がありますが、(1)の一部休業の日において、計算の確認をしてみましょう。
平均賃金が10,000円の労働者が労災事故に遭い、その日の労働に対する賃金として4,000円が支払われていたとき、補償するべき額は平均賃金の60%である6,000円と、実際に支払った賃金4,000円の差額、2,000円としてしまいそうになります。
正しくは、事業主は平均賃金から実際に支払われた賃金を除いた部分に対して60%を補償する義務がありますので、平均賃金10,000円と、実際に支払った賃金4,000円の差額、6,000円に対しての60%、3,600円の補償が必要になります。
また、労基法76条に基づく休業補償は所得税法上、非課税所得となるので(所得税法施行令第20条)、給与に合算して支払う場合には誤って所得税の計算に算入しないよう注意が必要です。
労災による休業は頻繁にあることではないと思いますので、労災保険の申請方法のほうに気をとられてしまいますが、業務災害の場合、最初の3日間は事業主に補償の義務があることを見落とさないようにしましょう。
文中の「平均賃金」については千葉労働局の資料に詳しい解説がありました。
千葉労働局>労働基準部賃金室_平均賃金について
https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/content/contents/heikinchingin.pdf
(遠藤)