社労士コラム

給与計算

退職後の年金手続きについて

2025.10.10.

退職後の年金手続きは、退職後の状況(再就職する、扶養に入る等)や退職者の年齢によって異なります。
退職者から退職後の手続きについて問合せを受けることもあると思いますので、年齢別に手続きをご案内します。

①60歳未満
●厚生年金保険の適用事業所に再就職する場合
原則、厚生年金保険に加入します。
手続きは、再就職先の会社が行います。

●扶養家族になる場合
国民年金に加入し、第3号被保険者となります。
手続きは、家族が勤務する会社が行います。

●上記に該当しない場合
国民年金に加入し、第1号被保険者となります。
手続きは、ご本人または世帯主が住所地の市区役所にて行います。「マイナポータル」からマイナンバーカードを利用して、電子申請することも可能です。

②60~64歳
●厚生年金保険の適用事業所に再就職する場合
原則、厚生年金保険に加入します。
厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受給する場合は、支給額が調整される場合があります。さらに、雇用保険法の高年齢雇用継続給付を受ける場合は、老齢厚生年金の一部(最高で標準報酬月額の4%)が支給停止されます。

●上記に該当しない場合
原則、手続きはありません。
65歳になる前に年金を受け取りたい場合は、繰上げ受給の請求を行います。ただし、ハローワークで求職の申込みをしたときは、失業給付の受給有無に関係なく、一定期間は老齢厚生年金が全額支給停止されます。
※受給資格期間が10年未満の場合と満額(40年間保険料納付分)の老齢基礎年金が受けられない場合は、国民年金の任意加入が可能です。手続きは、ご本人が住所地の市区役所か年金事務所にて行います。

③65歳以上
●厚生年金保険の適用事業所に再就職する場合
70歳未満の場合は原則、厚生年金保険に加入します。70歳以上の場合は70歳以上被用者に該当しますが、被保険者ではないため保険料負担はありません。手続きはいずれも、再就職先の会社が行います。
老齢厚生年金を受給する場合は、支給額が調整される場合があります。

●上記に該当しない場合
年金を受け取りたいタイミングで、自宅に送付されている「年金請求書」を年金事務所(加入期間がすべて国民年金第1号のみの場合は住所地の市区役所)へ提出します。
75歳まで繰下げ受給が可能なため、繰り下げる場合は手続きはありません。
※受給資格期間が10年未満の場合のみ、国民年金の特例任意加入が可能です。手続きは、ご本人が住所地の市区役所か年金事務所にて行います。

日本年金機構からは、退職者向けに年金手続き等を説明したパンフレットが公開されています。
退職後の年金手続きガイド

退職後の健康保険手続きは、こちらの過去のコラムをご覧ください。

(山田)

2025年(令和7年)分 年末調整について

2025.10.03.

年末調整の準備を始める時期となりました。
2025年(令和7年)の年末調整は、令和7年度税制改正の施行により、
基礎控除や給与所得控除などの見直しが行われます。
主な変更点は以下のとおりです。

1)基礎控除・給与所得控除の見直し
基礎控除は58万~95万円に拡大(所得に応じて適用額が変動)
給与所得控除の最低額は65万円に引き上げ
※給与収入160万円以下は所得税がかからなくなります。
 従来の「103万円の壁」が「160万円」に拡大したイメージです。

2)扶養控除・配偶者控除などの所得要件緩和
扶養親族に対する所得要件が48万円以下 → 58万円以下に引き上げ
※これまで控除対象外だった「年収103万~123万円以下」の家族が控除対象となる場合あり
勤労学生控除の所得要件も75万円以下 → 85万円以下に緩和

3)特定親族特別控除の新設
19歳以上23歳未満の親族が対象
合計所得金額が58万円超~123万円以下であれば、段階的に特別控除を適用
※控除を受けるためには「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要

4)住宅借入金等特別控除の「調書方式」導入
金融機関等が税務署に情報提供し、国税庁から本人に「年末残高情報」が提供される仕組み
※「調書方式」を利用すると、これまで必要だった金融機関からの年末残高証明書の提出が不要となります。

国税庁 年末調整がよくわかるページ(令和7年分)
改正の影響で申告内容が変わる従業員が多いと想定されるため、早期に説明・案内を行うことが大切です。
(菊沢)

令和7年度の最低賃金

2025.09.22.

令和7年度の最低賃金について
すべての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされ、
厚生労働省が結果を取りまとめ、公表しました。

それによると、最高額は東京都の1,226円(引上げ額64円)、
最低額は高知県・宮崎県・沖縄県の1,023円(引上げ額はいずれも71円)で、
最高額に対する最低額の比率(83.4%)は改善されました。

この後手続きを経て令和7年10月1日から令和8年3月31日までの間に
都道府県ごとに発効となります。
発効の時期は最大で6か月異なりますので注意が必要です。

過去最高とも言われる上げ幅ですが、
「賃上げ支援助成金パッケージ」として
各種助成金が用意されています。
単に賃金額を引き上げるだけでなく
生産性向上に資する計画や、労働時間削減の取組計画が必要など
各助成金によって要件があります。
申請集中のため時間に余裕を持った提出が呼びかけられてもいますので
対応はに早めに取り組む必要がありそうです。

最低賃金の大幅な上昇が続いています。
一部の助成金の要件にもなっていますが
生産性の向上には労使ともに、また各労働者レベルで
本気で取り組む必要性を強く感じます。

各情報はこちらから確認することができます。
すべての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました(厚生労働省
「賃上げ」支援助成金パッケージ(厚生労働省)

(藤代)

「スポットワーク」(スキマバイト)の労務管理

2025.07.17.

多様な働き方の一つとして、
単発・短時間で働く「スポットワーカー」の活用が急速に進んでいます。
必要な時に人材を確保できるメリットがありますが、
労務管理上の注意点がありますので、ポイントを紹介します。

□労働契約の成立時期と労働条件の明示
スポットワークでは、専用アプリ上でのマッチングを通じて、
面接等を行わずに就業が決定することが一般的な流れです。
面接を経ず先着順で就業が決定する場合には、
「求人応募があった時点」で労働契約が成立するものと考えられますので、
認識しておく必要があります。

労働契約成立後は、労働関係法令が適用され、
労働条件を明示する必要があります。
労働条件通知書の交付はスポットワークの仲介事業者が代行することもありますが、
交付は会社の義務ですので、きちんと交付されているか確認しておく必要があります。

□会社都合による休業は休業手当が必要
会社都合で、スポットワーカーに休業を命じる場合、
労働契約成立後であれば、労働基準法第26条に基づき、
使用者は労働者に対して休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う義務があります。

□賃金・労働時間に関する注意点
制服への着替えや業務の準備・片付け時間も、使用者の指揮命令下にあれば労働時間とみなされます。
これらの時間も正確に把握し、賃金の計算に含める必要があります。

その他、スポットワーカーの労働災害・ハラスメント防止も、
会社の義務となることも注意点です。

厚生労働省のスポットワークの労務管理のリーフレットにも詳細が記載されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/001512368.pdf

(斎藤)

R7年 年末調整のための各種様式が発表になりました

2025.07.11.

以前のR7税制改正の記事の時点では暫定発表だった
R7年 年末調整のための申告書様式が正式に発表になりました。

主な変更点としては
国税庁の様式ページA2-4に示されている、これまで配偶者控除申告を行っていた様式ですが
1枚で
・基礎控除申告
・配偶者控除申告
・特定親族特別控除申告 ※新設
・所得金額調整控除申告
を行うことになります。
申告内容が増えたことに加え、基礎控除の金額が本人の所得により段階的に変化することとなったので、
より複雑な構造になっています。

また、A2-1の扶養控除等(異動)申告書はR7年版とR8年版で内容が若干変わっており、
「主たる給与から控除を受ける」対象となる区分Bの名称が
R7までは「控除対象扶養親族」だったところ、R8から「源泉控除対象親族」になります。
これは、特定親族特別控除が創設されたことにより、
特定親族(19歳以上23歳未満かつ所得58万円超123万円以下)のうち、所得100万円以下の場合も
源泉控除対象となったことが理由です。
対象者が「特定扶養親族」なのか、「特定親族」なのかチェックする項目も増えています。

19歳以上23歳未満の家族がいる場合は、その所得によって
・R7年 年末調整での控除金額
・R8年 給与処理での源泉控除
にそれぞれ影響してきますので、これまで以上に丁寧な確認が必要になるでしょう。

(高村)

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