社労士コラム

労災保険

令和5年度「過労死等の労災補償状況」公表

2024.07.25.

厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、
仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、
労災請求件数や「業務上疾病」と認定し労災保険給付を
決定した支給決定件数などを取りまとめています。
6月28日に令和5年度の「過労死等の労災補償状況」が公表されました。

ポイントは下記のとおりです。

1)脳・心臓疾患に関する事案
・請求件数1,023件 前年度比220件増加 
 (うち死亡件数247件 前年度比29件増加)
・支給決定件数216件 前年度比22件増加 
 (うち死亡件数58件 前年度比4件増加)

2)精神障害に関する事案
・請求件数3,575件 前年度比892件増加 
 (うち未遂を含む自殺の件数212件 前年度比29件増加)
・支給決定件数883件 前年度比173件増加 
 (うち未遂を含む自殺の件数79件 前年度比12件増加)
 
精神障害の発病に関与したと考えられる事象として、
「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が
157件と一番多く、
続いて「業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」111件、
「セクシュアルハラスメントを受けた」103件、
「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」100件
の順となっています。

脳・心臓疾患、精神障害とも、前年比で請求件数、支給決定件数も増え、
特に、精神障害に関する事案については、
昨年9月に精神障害の労災認定基準が改正された影響もあるかと思いますが、
5年連続で過去最高を更新しています。
厚生労働省:令和5年度「過労死等の労災補償状況」

労災認定は、精神的な苦痛による精神疾患が原因となっていることが想定されます。
健康的に仕事ができる環境を作っていくためにもメンタルヘルスケアが重要なカギとなっていると考えます。
(菊沢)

令和6年度 労働保険の年度更新

2024.05.10.

令和6年度労働保険の年度更新の申告・納付期間は、6月3日(月)から7月10日(水)です。
電子申請は、6月1日(土)から申請可能です(受付は6月3日に行われます)。

昨年は、年度途中で雇用保険料率が変更されたため、前期・後期に分けて保険料を計算するイレギュラーな対応が必要でしたが、今年は通常通り1年分をまとめて計算します。

計算中に迷う箇所に、労働者の月平均人数や確定・概算保険料の計算時に発生する小数点以下の処理があると思いますが、小数点以下は切り捨てとなります。(ただし、雇用保険の被保険者数の月平均人数が0人となる場合は1人とします)

5月下旬に申告書類一式が事業所宛に送付されますが、今年度の案内は厚生労働省のホームページに公表されています。申告・納付期限が近づくと混み合いますので、事前に賃金集計を進めておくとスムーズに申告できると思います。

労働保険年度更新に係るお知らせ

(山田)

36協定届に記載する労働保険番号と法人番号

2024.03.15.

36協定は法所定様式で届出を行う必要がありますが、
この様式には労働保険番号と法人番号を記載する欄があります。

令和6年4月以降に有効期間が始まる36協定では、
この欄の記載が必須となります。
これまでは記載がなくても受付されていた
実態もあったようですが改まります。

労働保険番号は1社で複数有していることもあり
迷いやすいですが適切に記載しましょう。

未記載時には届出先労基署で受付がされない可能性があります。
記載番号が不明の場合は、その対応を事前に確認しておくなど
適切な36協定を作成する準備が必要です。
注意喚起をしている労働局もあります。
こちら(福井労働局)

記載欄自体はこれまでも設けられていましたので
法定様式で提出していた場合には影響がないかもしれません。

法定様式の届出事項を満たしていれば
任意様式での届出も認められていますが、
任意様式の場合は労働保険番号と法人番号が
記載されているか注意しましょう。

(藤代)

令和6年度 労災保険料率の改定

2024.03.01.

令和6年4月~の労災保険料率、雇用保険料率が発表になりました。

労災保険料率は、複数の業種で料率が改定されます。
雇用保険料率は、令和5年度から据え置きです。

労災保険料率は、平成30年以来の改定となります。
多くの業種で料率引き下げとなっていますが、一部、引き上げられた業種もあります。
同時に、第二種特別加入(一人親方など)の料率も一部の区分で改定、
請負工事等の労務比率も改定されています。

事業所の料率について、年度更新前に一度確認しておくとよいでしょう。
以下リンクより、各料率について改定前後の一覧を確認できます。

参考
厚生労働省 労災保険・雇用保険の特徴

(高村)

カスタマーハラスメントの労災認定基準への追加について

2023.12.15.

令和5年9月、精神障害の労災認定基準が改正され、「業務による心理的負荷評価表」の見直しが行われ、
「具体的出来事」の中に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(いわゆるカスタマーハラスメント)」が追加されました。

業務による心理的負荷評価表はURLの14ページ~18ページにあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001140929.pdf

心理的負荷が「強」になる例として、挙げられている具体的出来事は、
・ 顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた
・ 顧客等から、暴行等を反復・継続するなどして執拗に受けた
・ 顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた
・ 顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を、反復・継続するなどして執拗に受けた
・ 心理的負荷としては「中」程度の迷惑行為を受けた場合であって、会社に相談しても又は会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった

精神障害による労災認定の要件の一つに、
「対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」があり、
心理的負荷の評価に当たっては、発病前おおむね6か月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる出来事があり、
その後の状況がどのようなものであったのかを具体的に把握し、その心理的負荷の強度を判断します。
心理的負荷の全体を総合的に評価して「強」と判断される場合は、この要件を満たすものとされます。

「強」で例示されている出来事があったからと言って直ちに心理的負荷が「強」となるわけではなく、
その出来事自体や継続性、事後の対応、生じるに至った経緯などから総合的に判断されるので、これはあくまでも例示となります。

カスタマーハラスメントについては厚生労働省の「パワーハラスメントの防止に関する指針」において、
労働者の相談に応じることや、被害者への配慮等をすることが望ましいとされており、
労災リスクを軽減させるためだけでなく、職場環境を良くすることにも繋がります。

カスタマーハラスメント対策リーフレット(厚生労働省)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/pdf/casuhara_leaflet6P.pdf
(斎藤)

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