令和3年4月以降、36協定届の様式が変わります
令和3年4月1日に「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令」が施行されます。
これにより、
時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)の労働者、使用者の署名、押印が不要になります。
さらに、過半数代表者に関するチェックボックスが新たに設けられます。
令和3年4月1日以降の届出には、新様式を使用することとなります。
すでに新様式、記入例、届出に関するQAも公開されていますので、
あらかじめ確認しておくのがよいでしょう。
また、同じタイミングで
電子申請で協定届を提出する場合の電子署名、電子証明書が不要になります。
提出方法として検討されるのもよいかもしれません。
ただし、署名、押印が不要になるのはあくまで「協定届」ですので、
「協定書」を兼ねる場合は、労使双方が合意していることを明らかにするため
記名押印、または署名などが必要となります。
参考:厚生労働省 労働基準法施行規則等の一部を改正する省令について
※新様式、記入例、QAもこちらからリンクされています。
(高村)
時間単位の年次有給休暇
年次有給休暇は、原則1日単位で付与することとなりますが
就業規則で定め、労使協定を結ぶことで、年5日の範囲内で、1時間単位でも付与することが可能です。
なお、労使協定は届け出る必要はありません。
かねてより年次有給休暇の取得率向上のために推奨されてきましたが、
昨今、長期化する新型コロナウィルスの影響で、労働環境が見直されつつあることや、
令和3年1月1日より、子の看護休暇、介護休暇の時間単位付与が義務化されることにより
改めて注目されているように感じます。
時差通勤の促進や、短時間の用事でも気軽に有休を使用できるといったメリットがありますが
個人ごとの取得日数・時間の管理が煩雑になることや、
働き方改革で取得義務とされた5日間の年次有給休暇には含むことができない、など
導入前によく検討すべき点もあります。
労働環境を整える上での選択肢の一つとして、有効に活用できるとよいでしょう。
(高村)
労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直しについて
厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会が開催され、
36協定届等労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直しについて
方針案が示されました。
厚生労働省 第163回労働政策審議会労働条件分科会(8月27日)
方針(案)は下記のとおりです。
・使用者及び労働者の押印欄の削除ならびに法令上、押印又は署名を求めないこととする
・36協定届をはじめとする過半数代表者の記載のある法令様式については
様式上に協定当事者が適格であることについてのチェックボックスを設け、
使用者がチェックした上で、労働基準監督署長に届け出ることとする
今回の押印廃止は、あくまで行政に届け出る協定届に対してであって、
労使協定を締結する際の労使の押印に及ぶものではありません。
したがって、36協定届については、
36協定届が労使間で締結した36協定書を実務上兼ねている場合、
従来通り、労使双方の押印が必要です。
押印なしの協定届を届け出る場合、
それとは別に労使双方の署名押印の入った労使協定(36協定書)を作成する必要があると考えられます。
今後の動向に注意していきたいと思います。
(菊沢)
「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブック」が公開されました
経済産業省から掲題のガイドブックが公開されました。
主な対象とされているのは、パーソナルデータの利活用によりプライバシーへの配慮が
迫られることが想定される企業やその取引先企業で、
新事業の検討や問題対応の場面での活用が想定されています。
(パーソナルデータとは、個人情報保護法の個人情報だけではなく、
個人に関連するあらゆる情報を指す、としています。)
直接的な法律に基づくものではありませんが、
ガイドラインという形になったことや、対象企業や関係者も広い範囲で想定されていることのほか、
個人情報保護法を遵守していてもそれだけでは関係各者から満足を得られないとの指摘もされていて、
プライバシー保護要請の高まりを感じます。
採用や労務管理の場面でも個人情報保護法の範囲だけでなく
関連する多くの情報を扱いますので、
プライバシー保護という視点も意識して取り組むべきと思います。
(藤代)
整理解雇を行う際の注意点
整理解雇とは、使用者が、不況や経営不振などの理由で、解雇せざるを得ない場合に
人員削減のために行うものです。労働基準法等で整理解雇についてのルールの明記はなく、
判例から「整理解雇の4要件」といわれる基準が形成されてきました。
【整理解雇の4要件】
①人員削減の必要性
具体的な経営状況を示す数字などにより整理解雇をしなければならない経営上の必要性が客観的に認められること
②解雇回避努力
配置転換、出向、希望退職の募集、賃金の引き下げその他、整理解雇を回避するために、会社が最大限の努力を尽くしたこと
③人選の合理性
勤続年数や年齢など解雇の対象者を選定する基準が合理的で、かつ、基準に沿って運用がおこなわれていること
④解雇手続きの妥当性
整理解雇の必要性やその時期、方法、規模、人選の基準などについて、労働者側と十分に協議をし、
納得を得るための説明努力を尽くしていること
整理解雇を実施するには、原則、上記4要件を全て満たす必要あると考えられますが、
法律要件ではないことから、解雇権乱用かどうかを判断するために「4要素」として位置づけ、
総合的考慮がされる流れもあります。
人員削減の必要性については、一定の経営判断も尊重されると考えられています。
しかし、解雇回避努力は大変重視されますし、手続きの妥当性、公正さについても大変重要なポイントとなります。
いずれにしても、労働者側に人員整理の必要性などを十分に説明することなく、解雇の実施を急ぐと、
解雇の有効性や妥当性をめぐって労使間で紛争が生じる恐れがあります。労使間の紛争が発生すると、
その解決に労力をとられ、経営再建がそれだけ遅れるだけでなく、対外的なイメージダウンにもつながります。
整理解雇は過剰雇用を解消し、経営再建の方法の1つてはありますが、
あくまでも最終手段であることを認識し、実施の際は、十分慎重に行う必要があるでしょう。
(松原)
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