社労士コラム

2020年12月

育児休業中の就労について

2020.12.28.

育児休業は、その期間の労務提供義務を消滅させる制度ですが、一時的、臨時的であれば就労することができます。
今回、一時的・臨時的就労に該当するものがどのようなものか、例示されました。テレワークの普及により就労への
ハードルが下がったことで育児休業中の就労に注目が集まっているように思えます。

ただ、育児休業中の就労には次の4点に注意する必要があります。

① 就労は一時的・臨時的であること。
 (育児休業開始当初から、あらかじめ決められた1日4時間×20日や毎週特定の曜日や
 時間に勤務する場合は育児休業中の就労に該当しません。)
② 従業員が自ら事業主の求めに応じ、合意すること。
 (事業主の一方的な指示により就労させることはできません。)
③ 事業主は、育児休業中に就労しなかったことを理由に不利益な取り扱いを行ってはならないこと。
④ 就労日数、時間数によっては育児休業給付金が不支給や減額支給等になる場合があること。
 (就労が月に10日を超え、かつ就労時間が80時間を超えると育児休業給付金が支給されません。)

女性の場合は、1年近く仕事から離れてからの復帰より休業中も仕事に関わることでスムーズな仕事
復帰が期待できたり、男性の場合は、育児休業の取得促進につながる可能性があります。
ただし、恒常的・定期的に就労させた場合には育児休業をしている事にはならないため、社会保険料
の免除などの対象にもならないので就労の仕方には注意が必要です。

育児休業中の従業員か就労する場合は今回の例示を参考にするとよいでしょう。
育児休業中の就労について

(松原)

複数の事業場に雇用される労働者の労災認定

2020.12.25.

令和2年9月1日、労働者災害補償保険法が改正されました。
主な変更点は以下の通りです。

複数の事業場に雇用されている労働者(複数事業労働者)を対象に
①休業、死亡、または障害が残った場合の給付額が、すべての事業場の賃金を合算した額をもとに計算されます
②すべての事業場の負荷(労働時間、ストレス等)を総合的に評価して労災認定されます

令和2年9月1日以降に発生した傷病が対象で、
それより前に発生したものは従来通りの取り扱いになります。

改正前は、事故が起こった事業場で支払われている賃金のみが給付額の基礎とされていました。
また、脳・心臓疾患や精神障害等の労災認定については、
1つの事業場でかかる負荷を評価し、基準に達していなければ対象外でした。
働き方改革によって副業、兼業が推進され、普及しつつあることから
より、労働者の実態に即した補償がされるようになったといえます。

なお、今回の改正点については、メリット制には影響しないとされています。

この改正に伴って、提出書類の様式も変更になっていますので
最新の様式であることを確認しましょう。

どのような場合に複数事業労働者となるか、申請書類の記入例等、詳細なパンフレットが準備されています。
複数事業労働者への労災保険給付わかりやすい解説

また、この改正に伴って
「精神障害の労災認定」リーフレットも改訂され、複数事業労働者に関する記述が追加されています。

参考
厚生労働省 労働者災害補償保険法の改正について

(高村)

年次有給休暇の取得実態について

2020.12.15.

厚生労働省から、令和2年の「就労条件総合調査」の結果が公表されました。
これは、民間企業の就労条件の現状を把握するために、
労働時間制度や賃金制度に関する事項について調査した結果となります。

このうち、年次有給休暇の1年間の取得状況(平成31年・令和元年(又は平成30会計年度)は、
以下のとおりとなっています。
労働者一人あたりの平均付与日数 18.0日(前年調査18.0日)
         平均取得日数    10.1日( 同  9.4日)
         平均取得率 56.3%( 同  52.4%)
昭和59年以降で取得日数は過去最多、取得率は過去最高となったとのことで、
令和元年4月から年5日の年次有給休暇取得が義務化(対象:年次有給休暇が
10日以上付与される労働者)されたことが影響しているのかもしれません。

ただし、この調査は、常用労働者30人以上の企業を対象に行われており、
30人未満の企業の実態は反映されていません。
年次有給休暇の取得日数・取得率は、常用労働者の人数が多い企業ほど
高い数字であるという結果も出ていますので、
調査対象となっていない小規模の企業を含めてみると、
年次有給休暇の取得数はもっと低くなることも想定されます。

職場の仲間に迷惑がかかる、後で自分が忙しくなる等の理由で、
年次有給休暇を取得することにためらいを感じる人も多いようです。
自社の従業員の取得率が低いと感じる場合には、
年次有給休暇の計画的付与制度(※1)を採り入れたり、
複数人で業務内容を共有し、お互いにフォローし合えるような業務体制を構築したりと、
従業員が取得しやすい環境整備を行うことが有効でしょう。
厚生労働省では、「年次有給休暇取得促進特設サイト」も開設していますので、
ご参照ください。

(※1)年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数について、
計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度。労使協定の締結が必要。

厚生労働省「令和2年 就労条件総合調査 結果の概況」

年次有給休暇取得促進特設サイト

(金子)

時間単位の年次有給休暇

2020.12.08.

年次有給休暇は、原則1日単位で付与することとなりますが
就業規則で定め、労使協定を結ぶことで、年5日の範囲内で、1時間単位でも付与することが可能です。
なお、労使協定は届け出る必要はありません。
かねてより年次有給休暇の取得率向上のために推奨されてきましたが、
昨今、長期化する新型コロナウィルスの影響で、労働環境が見直されつつあることや、
令和3年1月1日より、子の看護休暇、介護休暇の時間単位付与が義務化されることにより
改めて注目されているように感じます。

時差通勤の促進や、短時間の用事でも気軽に有休を使用できるといったメリットがありますが
個人ごとの取得日数・時間の管理が煩雑になることや、
働き方改革で取得義務とされた5日間の年次有給休暇には含むことができない、など
導入前によく検討すべき点もあります。

労働環境を整える上での選択肢の一つとして、有効に活用できるとよいでしょう。

参考
厚生労働省 年次有給休暇取得促進特設サイト

(高村)

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