社労士コラム

2023年10月

続:令和6年4月~ 労働条件明示のルール変更について

2023.10.27.

6月にこちらのコラムでもご紹介した
労働条件明示ルールの変更について、
先日、厚生労働省から詳細パンフレットとQAが公開されましたので
改めてご紹介いたします。

厚生労働省 令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
コラム過去記事 令和6年4月~ 労働条件明示のルール変更について

今回公表されたパンフレットでは
就業場所、業務の内容の変更の範囲について
それぞれを限定しない場合の記載例として、
「会社が指定する事業所」「会社が定める業務」のように、包括的な表現でも
差し支えないことが示されています。
事業所数が多い、もしくは新規出店が見込まれている場合などは
このような表現でカバーできるので、都度、雛形を変更する煩雑さは回避できるでしょう。

しかし、便利な表現であるとはいえ、特定の店舗で勤務する契約で雇用された労働者に
上記のような包括的な記載のまま労働条件を明示してしまいますと、
誤解を招く恐れがあると考えます。
トラブル回避のため、また、労使双方が安心できるよう
可能な限り、個別に適切な表現で明示することが望ましいと言えます。

令和6年4月1日からの適用となりますが
4月1日以降の契約であったとしても、
3月中に労働契約を締結する場合は、上記の明示ルールは適用されないこととされています。(QAより)
一方で、確実に4月から適用するためには、早めの準備が必須となりますし、
可能であれば4月前から運用を開始することもよいでしょう。

(髙村)

年収の壁・支援強化パッケージ

2023.10.20.

厚生労働省から、令和5年9月27日に、「成長と分配の好循環」等の実現や、社会全体の労働力不足への対応策として、「年収の壁・支援強化パッケージについて」の中で、次の①~④の対応が発表されました。

〈106万円※1の壁への対応〉
① キャリアアップ助成金のコース新設
雇用保険のキャリアアップ助成金に、「社会保険適用時処遇改善コース」を新設。
短時間労働者が被用者保険(厚生年金保険・健康保険)の適用による手取り収入の減少を意識せず働くことができるよう、労働者の収入を増加させる取組(②の「社会保険適用促進手当」も対象)を行った事業主に対して、労働者1人当たり最大50万円の支援を行う。
(標準報酬月額・標準賞与額の15%以上分を追加支給した場合から対象)
こちらは本日詳細が発表されましたので下記リンク先でご確認ください。
  [ご参考1] [ご参考2]

② 社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
これまで加入対象外だった短時間労働者が新たに社会保険加入した場合に、事業主は「社会保険適用促進手当」を給与・賞与とは別に支給する事ができ、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととする。最大2年間の措置。

〈130万円の壁※2への対応〉
③ 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認しているところ、短時間労働者である被扶養者(第3号被保険者等)について、一時的に年収が130万円以上となる場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な被扶養者認定を可能とする。(同一の者について原則として連続2回までを上限とする)

④ 企業の配偶者手当の見直し促進
中小企業においても配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい 資料を作成・公表する。
配偶者手当が就業調整の一因となっていること、配偶者手当を支給している企業が減少の傾向にあること等 を各地域で開催するセミナーで説明するとともに、中小企業団体等を通じて周知する。

※1:106万円の壁
被保険者100人超企業に週20時間以上で勤務する場合の社保加入基準額
※2:130万円の壁
106万円の壁に該当する以外の場合に社会保険の扶養対象外となる基準額

労働者に扶養される配偶者で社会保険料の負担が無い層のうち、約4割が就労しており、その中には一定以上の収入(106万円・130万円)になった時の社会保険料負担の発生や収入要件のある企業の配偶者手当不支給による手取り収入の現象を理由として、就業調整をしている方が一定数いるため、これらの方々が就業調整せずに働けるように後押しする為の対策となっています。

実際に事業主が対応する場合には、既に年収の壁を超えて就労している方々との不公平感が出ないようにするなどの課題もありそうですが、最新情報を確認しながら、取り組みやすいものについてはご検討頂けると良いですね。

(前田)

随時改定 同一月に固定的賃金の増額と減額がある場合

2023.10.13.

社会保険の随時改定は、次の3つの要件がすべて揃ったときに対象となります。
・固定的賃金の変動または賃金体系の変更
・変動月以降3ヶ月間の支払基礎日数が17日(11日※)以上
・変動月以降3ヶ月間の報酬の平均額と現在の標準報酬月額の差が2等級以上
※特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合

さらに、固定的賃金の変動は、次の①②どちらかに該当している必要があります。
①固定的賃金が〝増額〟(↑)し、3ヶ月間の報酬の平均額も〝増額〟(↑)した
②固定的賃金が〝減額〟(↓)し、3ヶ月間の報酬の平均額も〝減額〟(↓)した
つまり、固定的賃金と平均額が両方とも増額した(または減額した)場合のみが、随時改定の対象となります。

同一月に複数の固定的賃金が変動することがありますが、中には、増額と減額の両方が発生する場合があります。
この場合は、〝固定的賃金の総額〟が増額するのか減額するのかで判断します。

(例)昇給のため基本給を増額したが、住所変更に伴い通勤手当を減額した
【変動前】基本給24万円、通勤手当2万円(合計26万円)
【変動後】基本給26万円、通勤手当1万円(合計27万円)→固定的賃金が1万円増額
→3ヶ月間の報酬の平均額も増額した場合は、随時改定の対象となります。(平均額が減額した場合は、随時改定にはなりません)

判断に迷ったときは「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」が参考になります。今回の事例は、「○随時改定について_問5」に記載されています。

(山田)

2023年(令和5年)年末調整変更点

2023.10.05.

年末調整の準備を始める時期となりました。
今年の変更点は以下のとおりです。

1)非居住者(国外居住)である扶養親族の適用範囲変更
 令和2年税制改正により、
 扶養控除の対象となる扶養親族の範囲変更され、令和5年から適用されます。
 令和4年12月までは、16歳以上の非居住者が対象でしたが、
 令和5年1月以降は、以下に該当する人が対象となります。 

 ・16歳以上30歳未満の人
 ・70歳以上の人
 ・30歳以上70歳未満のうち、次のいずれかに該当する人
  ①留学により国内に住所及び居住をしなくなった人
  ②障害者
  ③扶養控除の適用を受けようとする居住者から、
   その年において生活費または教育費に充てるために、
   38万円以上の送金を受けている人
【令和5年 年末調整のしかた 昨年と比べて変わった点】

2)住民税に関する事項の記載項目の追加
 令和4年税制改正により、令和5年提出の扶養控除等申告書から 
 「住民税に関する事項」に退職手当を有する配偶者・扶養親族の欄が追加されました。
【令和5年分 給与所得者の扶養控除等申告書記載例】

 税額計算にあたって所得税は合計所得金額に退職所得を含むのに対し、
 住民税は退職所得を含まない扱いになっています。
 退職金を受け取った配偶者や扶養親族がいる場合は、
 退職所得を含めずに計算した場合、
  所得税計算上はでは受けられない配偶者控除や扶養控除等を
 住民税では適用できるケースもあります。

国税庁HPに令和5年の年末調整情報が公開されています。
早めに内容を確認しておくとよいでしょう。
【国税庁 年末調整がよくわかるページ(令和5年分)】

(菊沢)

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