社労士コラム

2026年02月

治療と就業の両立支援

2026.02.27.

令和8年4月から、病気を抱える労働者の「治療と就業の両立支援」が事業主の努力義務になります。

現状、高齢者の就労増加等を背景に、疾病により通院しながら働く労働者は年々増加しています。また、医療技術等が進歩し、かつては不治の病とされていた疾病が、長く付き合う病気に変化しています。
しかし、疾病に対する労働者自身の理解不足や職場の理解・支援体制が不十分であることにより、退職に至る場合や業務上の理由で適切な治療を受けられない場合もあります。
両立支援は、労働者の健康確保・就業継続だけでなく、会社にとっても継続的な人材確保・労働者の安心感やモチベーション向上による人材定着・生産性向上・健康経営の実現等の意義があると考えられています。

支援体制は、「主治医」「会社・産業医」「支援機関の両立支援コーディネーター」によるトライアングル型のサポート体制を構築して進めます。

支援は下記の流れで進めます。
①労働者から会社に両立支援を申し出る
※労働者は、あらかじめ主治医に自らの仕事に関する情報を提供し、主治医から支援に必要な情報(主治医意見書等)の提供を受け、会社に提出する
②会社は産業医等から意見を聴取し、主治医の意見や労働者の要望を勘案し、具体的な支援内容を検討する
③会社が「両立支援プラン」を作成・実行する
※周囲の同僚や上司等へ、必要な情報に限定したうえで可能な限り開示し、理解を得ながら進める
※休業が必要な場合は、あらかじめ休業可能期間や職場復帰手順等を労働者へ情報提供したうえで休業手続きを行い、疾病が回復した際には、配置転換も含めた職場復帰可否を判断し、「職場復帰支援プラン」を策定する

また事業主には、事前の環境整備が望まれます。
●基本方針等の表明と労働者への周知
・両立支援の必要性や意義を共有し、両立しやすい職場風土を醸成する
●研修等による意識啓発
・すべての労働者向けや管理職向けに実施する
●相談窓口等の明確化
・労働者からの申出が原則のため、労働者が安心して相談・申出を行えるようにする
●制度・体制等の整備
・時差出勤・短時間勤務・時間単位有休・在宅勤務等の制度を検討・導入する
・支援の申し出を受けた場合の対応手順・関係者役割を整理する
・本人の同意を得た上で、関係者間の円滑な情報共有のための仕組みを作る 等

厚生労働省のホームページ「治療と仕事の両立支援ナビ」では、ガイドラインや取り組み事例等が掲載されています。

(山田)

令和8年3月分(子ども・子育て支援金は4月分)からの協会けんぽの保険料率

2026.02.20.

令和8年3月分(4月納付分)からの協会けんぽの保険料率が協会けんぽのHPージで公表されました。

令和8年度保険料率のお知らせ | 全国健康保険協会
令和8年度保険料額表(令和8年3月分から) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

令和8年度は保険料率が、
・引き下げ:40都道府県
・引き上げ:なし
・据置き:7都道府県
となっています。
東京都では、9.85%(事業主・被保険者:4.925%)で、前年度の9.91%から引き下げとなっています。

介護保険料率(全国一律)については、1.62%(事業主・被保険者:0.81%)となり、
前年度の1.59%から引き上げとなっています。
令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

保険料率の改定は3月分(4月納付分)から適用されますので、
4月給与から控除される保険料が対象となります。
3月に賞与支給がある場合は、変更後の保険料率で計算することになりますので、ご注意ください。

なお、子ども・子育て支援金の控除開始は、令和8年5月支払給与分からです。
給与計算ソフトの設定変更や控除項目の確認を早めに行っておきましょう。

さらに、令和8年度の雇用保険料率についても、引き下げが予定されています(正式決定は今後の告示により確定)。
年度替わりは改定が重なる時期です。適用月と控除月を確認し設定変更を忘れないようにしましょう。

(菊沢)

定期健康診断の実施義務

2026.02.13.

会社は1年以内ごとに1回、定期的に健康診断を行わなくてはならないことが
安全衛生法で決められています。
今回は定期健康診断の義務の範囲を確認したいと思います。

●対象者について
常時使用する労働者が対象です。
パートアルバイトや有期契約の社員は
契約期間の定めがないか1年以上の期間が予定され、かつ、
週所定労働時間がフルタイム社員に比べて4分の3以上の人が対象です。
契約期間が1年未満の場合や1年以上であっても週所定労働時間が短い人についての
健康診断は義務ではありません。
4分の3未満であっても2分の1以上であれば
実施が望ましい(短時間有期雇用法の施行に関する通達)とされていますが
義務ではなく任意の対応です。

●費用について
法定の検査項目に要する費用は会社が負担する必要があります。
法令で具体的は記載はありませんが、会社に健康診断実施の義務があることから
その費用は当然会社が負担すべき(安全衛生法通達)、となっています。
例えば人間ドックや婦人科健診は法定の検査項目にはありません。
健康診断の申込時に「法定の検査項目」と指定すると
必要最小限の項目での検査となります。
検診実施機関によっては法定項目と任意項目とに分けて
会計をしてくれますので、会社負担と自己負担を区別することもできます。

●時間について
費用と同様に法令での具体的な記載はありませんが
安全衛生法通達に記載があり、
時間は当然には会社が負担するべきものではない、となっています。
健康診断は業務との関連して行われるものではないというのが
その理由ですが、一方で健康確保は事業運営に必要とも考えられ
時間も会社が負担(賃金を支払う)することが望ましいとされます。
就業時間内での健康診断を認めている例は少なくないと思いますが、
月給者のみ賃金を支払い時給者には賃金を支払っていないケースは
同一労働同一賃金の点で適切でない可能性があります。

健康診断に要する費用や時間をめぐっては
社員が想定していた内容と異なると不満となることがあるので
義務の範囲をふまえルールを明確にしたり
予め説明するなど対応があるとよいでしょう。

(藤代)

私傷病による労務不能での解雇はできるのか

2026.02.06.

従業員が健康を害してしまい、働くことができなくなってしまうことがあります。
厚生労働省のモデル就業規則では「解雇」の条項の中に「精神又は身体の障害により業務に耐えられないとき」という項目があるので、自社の就業規則におなじように規定している例も多いと思います。
健康を事由に労務の提供ができない事態が起こった場合、すぐに就業規則を当てはめる前に確認したいのが、労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とあることです。

ともすれば何十年もの長期間にわたる従業員の雇用において、例えば風邪など数日程度の労務の提供不能で解雇としてしまっては「社会通念上相当」とは言い難いのは想像しやすいと思います。では解雇権の濫用とされない、「社会通念上相当」な労務の提供不能とはどういった状態か、ということを判断する必要があります。
また、本来の業務へ就くことができなくても、総合職など業務内容や職種を限定されない形で雇用契約をしている場合、人事異動等によって労務の提供ができる業務があるなら、なお労務の提供がある状態(会社側は解雇を回避するための措置をとれるはず)とされた事例もあります。

このようなことを考えると、労務を提供するという契約を履行できない場合には従業員側の契約不履行なので「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」であるという要件を満たせば普通解雇が可能、しかし、すぐに適切な判断をすることが大変難しい、ということがわかります。

実務的には休職制度を利用すると運用しやすいと言えます。私傷病による労務の提供不能が申し出られた際には休職を発令できるよう規定しておき、休職期間満了時に復職できない場合には自然退職となる旨を定めておくことができます。休職自体は法律に定めのあるものでなく、各会社の就業規則によるものなので制度設計が必要、休職が規定されていない場合もあると思いますが、規定する利点として解雇の猶予措置として運用できること、自然退職としておくと復職できない場合に一種の合意退職となるのでトラブルになりにくいことが挙げられます。
もちろん、休職期間に休養してもらい健康を回復して復職していただくことが趣旨です。

(遠藤)

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