社労士コラム

労働保険

雇用保険の給付金の支給限度額の変更

2024.08.02.

令和6年8月1日から適用される雇用保険の給付金の支給限度額が公表されました。
変更後の金額は下記のとおりです。

●高年齢雇用継続給付
・支給限度額 370,452円 → 376,750円
・最低限度額 2,196円 → 2,295円
・60歳到達時等の賃金月額
 上限額:486,300円 → 494,700円
 下限額:82,380円 → 86,070円

●介護休業給付
・支給限度額 上限額 341,298円 → 347,127円

●出生時育児休業給付
・支給限度額
 上限額(支給率67%) 289,466円 → 294,344円

●育児休業給付
・支給限度額
 上限額(支給率67%) 310,143円 → 315,369円
 上限額(支給率50%) 231,450円 → 235,350円

支給限度額は、毎月勤労統計の平均定期給与額を基に定められています。
景気等による賃金額の増減を反映するために、毎年見直しが行われていますが、令和4年以降は上昇しています。
今までは支給限度額以上の賃金を受けていたため支給対象外だった方も、限度額の変更により、今後は支給対象となる可能性がありますので、申請漏れがないように注意しましょう。

https://www.mhlw.go.jp/content/001281481.pdf

(山田)

令和5年度「過労死等の労災補償状況」公表

2024.07.25.

厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、
仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、
労災請求件数や「業務上疾病」と認定し労災保険給付を
決定した支給決定件数などを取りまとめています。
6月28日に令和5年度の「過労死等の労災補償状況」が公表されました。

ポイントは下記のとおりです。

1)脳・心臓疾患に関する事案
・請求件数1,023件 前年度比220件増加 
 (うち死亡件数247件 前年度比29件増加)
・支給決定件数216件 前年度比22件増加 
 (うち死亡件数58件 前年度比4件増加)

2)精神障害に関する事案
・請求件数3,575件 前年度比892件増加 
 (うち未遂を含む自殺の件数212件 前年度比29件増加)
・支給決定件数883件 前年度比173件増加 
 (うち未遂を含む自殺の件数79件 前年度比12件増加)
 
精神障害の発病に関与したと考えられる事象として、
「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が
157件と一番多く、
続いて「業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」111件、
「セクシュアルハラスメントを受けた」103件、
「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」100件
の順となっています。

脳・心臓疾患、精神障害とも、前年比で請求件数、支給決定件数も増え、
特に、精神障害に関する事案については、
昨年9月に精神障害の労災認定基準が改正された影響もあるかと思いますが、
5年連続で過去最高を更新しています。
厚生労働省:令和5年度「過労死等の労災補償状況」

労災認定は、精神的な苦痛による精神疾患が原因となっていることが想定されます。
健康的に仕事ができる環境を作っていくためにもメンタルヘルスケアが重要なカギとなっていると考えます。
(菊沢)

令和6年度 労働保険の年度更新

2024.05.10.

令和6年度労働保険の年度更新の申告・納付期間は、6月3日(月)から7月10日(水)です。
電子申請は、6月1日(土)から申請可能です(受付は6月3日に行われます)。

昨年は、年度途中で雇用保険料率が変更されたため、前期・後期に分けて保険料を計算するイレギュラーな対応が必要でしたが、今年は通常通り1年分をまとめて計算します。

計算中に迷う箇所に、労働者の月平均人数や確定・概算保険料の計算時に発生する小数点以下の処理があると思いますが、小数点以下は切り捨てとなります。(ただし、雇用保険の被保険者数の月平均人数が0人となる場合は1人とします)

5月下旬に申告書類一式が事業所宛に送付されますが、今年度の案内は厚生労働省のホームページに公表されています。申告・納付期限が近づくと混み合いますので、事前に賃金集計を進めておくとスムーズに申告できると思います。

労働保険年度更新に係るお知らせ

(山田)

雇用保険法改正法案

2024.05.02.

雇用保険の適用拡大を盛り込んだ「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が
4月11日の衆議院本会議で可決されました。今国会で成立する見通しです。

改正の概要は以下の通りです。
・多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築
・「人への投資」の強化等のため、雇用保険の適用拡大
・教育訓練やリスキリング(学び直し)支援の充実
・育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等の措置
<雇用保険法等の一部を改正する法律案(令和6年2月9日提出)(厚労省)> 概要

この中で、雇用保険の適用拡大について、雇用保険の被保険者加入要件のうち、
週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に
適用対象を拡大するというものです。
令和10年10月1日から施行される予定です。

これに伴い、基本手当の支給等に関する基準等について
原則的には現行の取扱いが維持されることになりますが、
失業等給付等の被保険者期間の算定基準の見直しが行われます。

離職日から2年間に被保険者期間が12ヶ月以上のうち、
「1ヶ月として被保険者期間に算入されるための基準」が
以下のように変更される予定です。

離職日から1ヶ月ごとに区切っていった期間に
賃金の支払の基礎となった日数が「11日以上」又は
賃金の支払の基礎となった労働時間数が「80 時間以上」ある場合

離職日から1ヶ月ごとに区切っていった期間に
賃金の支払の基礎となった日数が「6日以上」又は
賃金の支払の基礎となった労働時間数が「40 時間以上」ある場合

また、現行では複数事業所で勤務している場合、
原則としてその者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける
雇用関係の事業所についてのみ被保険者となりますが、
適用拡大によりその判断が難しくなるのではというところが気になるところです。

パートタイマーなど短時間勤務者を多数雇用している事業所には影響が大きいと考えられます。
今後の動向に注目しておくとよいでしょう。
法律案要綱 法律案新旧対照条文
(菊沢)

出向・転籍後1年以内の者の出産手当金・育児休業給付金の手続き

2024.03.29.

産休・育休期間中は生活保障として出産手当金・育児休業給付金の制度が用意されていますが、休業開始前1年以内に出向や転籍等があった者の場合は、通常の申請書類のほか、追加の書類提出が求められます。

●出産手当金
(前勤務先・現在の勤務先ともに協会けんぽの場合に限ります)
産休開始月までの12ヶ月間に、勤務先の変更等により保険証の番号が変わった場合は、「別添」を添付します。

●育児休業給付金(出生時育児休業給付金を含む)
給付金受給には、育休開始前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あることが必要です。
現在の勤務先のみで要件を満たさない場合は、前勤務先の被保険者期間を通算して要件を満たすかどうかが判断されます。
前勤務先の被保険者期間は、「期間等証明書」にて確認されるため、初回申請時に添付します。
期間等証明書は、前勤務先がハローワークへ申請することで発行されます。

特に期間等証明書は準備期間が必要なため、余裕をもって準備を進めると良いでしょう。

(山田)

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