社労士コラム

出向者の労働契約と労務管理について

2020.06.01.

出向とは、出向元と何らかの雇用関係を保ちながら、出向先との間において
新たな労働契約関係に基づき相当期間継続的に勤務する形態であり、
出向元との関係から移籍型出向いわゆる「転籍」と在籍型出向いわゆる「出向」とに分類されます。

転籍(移籍型出向)とは、
出向先との間にのみ労働契約関係がある形態で、出向元と労働者との労働契約は終了しているものです。
労働者は出向先とのみ労働契約関係があるので、出向先についてのみ労働基準法等の適用があります。
労務管理に関しても、労働時間・休日・休暇の規程や健康診断・ストレスチェックの実施は、
労働契約関係のある出向先のルールに基づくことになります。

出向(在籍型出向)とは、
労働者が出向元との労働契約関係を維持しつつ、出向先との間に労働契約を締結し、一般に出向先において労働を提供するものです。
このように、出向元、出向先双方とそれぞれの労働契約関係があるので、
出向元、出向先及び労働者の三者間の取決めによって定められた権限と責任に応じて、
出向元の使用者又は出向先の使用者がそれぞれ労働者に対して労働基準法等の使用者としての責任を負うことになるため、転籍に比べると責任の所在やルールの適用が少々複雑です。
出向元と出向先では、就業場所や従事すべき業務、始業・終業の時刻や休日などが異なります。
一般的には、就労に関する権利義務は出向先にあり、その他の権利義務(解雇・退職などの雇用の根幹に関わるもの)は
出向元に残ると考えられています。就業規則の適用も同様の取扱いになります。

【出向者の労務管理具体例】
・労働時間・休憩・休日
実際に働いている出向先のルールを適用します。
・年次有給休暇
出向元で発生した有給休暇は原則出向先で取得できます。(ただし、出向契約による)
また、出勤率を算定する際、出向元と出向先の出勤日数を通算した期間で判断します。
・健康診断
出向先で実施するのが一般的です。
・ストレスチェック
労働契約関係のある事業者で行なうことになりますが、出向者と出向先との労働関係が存在するかどうかは労働関係の実態、
つまり、指揮命令権、賃金の支払い状況を総合的に勘案して判断します。
集団分析に関しては、職場単位で実施するため、出向先事業所で出向者も 含めて実施するのが望ましいです。
・ハラスメント対応
もし出向者がハラスメントにあったら、多くの場合、出向先が安全配慮義務違反の責任が問われますが、
出向元も同じように義務を負っているという点から、出向元は知らぬ存ぜぬでは済まされません。
出向者が抱える問題や状況を把握し、出向先と出向元で情報を共有し 適切に対処することが大切です。

出向者に関する取扱いについて、法令上明確な規定が無いため、労務管理等曖昧になってしまいそうですが、
出向者を受け入れる際は、出向契約をよく確認した上で、対応するのが望ましいでしょう。

【参照】厚生労働省:労働政策審議会労働条件分科会 第65回資料
(松原)

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