社労士コラム

雇用保険

出生時育児休業に関する手続きの注意点

2023.03.03.

昨年10月の改正育児介護休業法施行から数ヶ月が経ち、
改正により新設された出生時育児休業取得の実績も積み上がってきました。
女性が取得の中心だったこれまでの育児休業と比べ、
期間の長短や取得時期が様々であるという実態も見え、
それに応じた注意点も出てきました。
そこで実務上注意が必要な点をピックアップします。

・取得可能な期間と日数の管理
出生時育児休業は出生日又は予定日のいずれか遅い方から
56日までの期間内に28日間を限度に取得が可能です。
56日がいつなのか、残り何日間が取得可能なのか、
予め管理しておくことで本人申出時に適切に対応できます。
56日経過は雇用保険の給付金申請開始のタイミングでもあります。

・社会保険料免除手続のタイミング
出生時育児休業は予定日からの取得が可能ですが
手続上記載が必要な日にちは出生日です。
休業を開始していても出生前には届出ができない点と、
保険料の本人給与での免除処理と年金事務所又は健保組合への
納付免除の開始月が一致しない可能性がある点に注意が必要です。

・厚生年金養育特例申出手続きのタイミング
この特例は次の出生時育児休業や育児休業の
保険料免除期間が開始すると自動的に終了します。
複数回の保険料免除を伴う休業を取得する場合は、
いつ提出することが適切なのか確認するとよいでしょう。
標準報酬が下がらないなど、状況によっては
養育特例申出手続を提出する実益がないかもしれません。
事前に整理できていると本人にも案内がしやすいです。

社内の管理簿や本人案内の場面において上記注意点を
入れておくと効率的ではないでしょうか。

(藤代)

介護休業給付の対象となる休業

2023.02.24.

雇用保険の介護休業給付の対象となる休業は次の①、②のどちらも満たすものとされています。
①負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護
(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態にある家族(次のいずれかに限る)を、介護するための休業であること。

対象家族は、被保険者の、配偶者
父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫

②被保険者が、その期間の初日及び末日とする日を明らかにして事業主に申し出を行い、
これによって被保険者が実際に取得した休業であること。

①について、2週間以上の休業が要件ではなく、対象となる家族の方が常時介護を必要とする期間が2週間以上ということが要件となっています。
2週間以上の介護が必要となるが、10日間だけ介護休業を取得し、10日分の介護休業給付を受給することが可能です。

介護休業給付が受けられる期間は対象家族1人につき通算93日間までです。
この93日を、3回を上限に分割して取得し、給付を受けることができます。
別の対象家族の方の介護休業は別で日数をカウントするので、
例えば父、母の介護についてそれぞれ93日間取得し、給付を受けることができます。

介護休業給付の受給資格には介護休業を開始した日前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上あること等の要件もあります。
介護休業取得の申出があった際に対応できるように確認しておくと安心です。

雇用保険事務手続きの手引 介護休業給付について
Q&A~介護休業給付~

(斎藤)

人材開発支援助成金の改正

2023.01.13.

最近、リスキリングという言葉をよく耳にするようになりました。

リスキリングとは、経済産業省の資料では
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」としています。
経済産業省 第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会 資料2-2 石原委員プレゼンテーション資料

近年ではDX化に対応するための新たなスキル習得を指すことが多く、
すでに社員のDX研修などで、リスキリングを実施している企業もあります。

2022年12月に厚生労働省の人材開発支援助成金の内容が改正され、
社内でリスキリングを実施する際に活用できる可能性がありますので、ご紹介いたします。

今回の改正では、「事業展開等リスキリング支援コース」の創設と、
「人への投資促進コース」の内容の拡充が行われました。

□「事業展開等リスキリング支援コース」(2022年12月に新設)
企業の持続的発展のため、新製品の製造や新サービスの提供等により新たな分野に展開する、または、デジタル・グリーンといった成長分野の技術を取り入れ業務の効率化等を図るため、
① 既存事業にとらわれず、新規事業の立ち上げ等の事業展開に伴う人材育成
② 業務の効率化や脱炭素化などに取り組むため、デジタル化・グリーン化に対応した人材の育成
に取り組む事業主を対象に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を高率助成により支援する制度です。

□「人への投資促進コース」
高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での訓練を行う事業主に対する高率助成、
サブスクリプション型の研修サービスによる訓練への助成、
労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主への助成などがあります。
12月の改正では、メニューに「高度デジタル人材訓練の支給対象訓練」の追加、
助成限度額の引き上げや定額制訓練の助成率の引き上げ及び対象訓練の緩和などが行われました。

コースやメニューごとに支給要件や助成率・限度額は異なりますので、詳細内容は下記をご確認ください。

人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(詳細版)
人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内(詳細版)

(斎藤)

育児休業給付の受給資格確認

2022.12.16.

雇用保険の育児休業給付金を受けようとする際には
以下の支給要件を満たす必要があります。

①1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した被保険者であること
②休業開始日前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上または就業した時間数が
 80時間以上ある完全月が12か月以上あること
③一支給単位期間中の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること

このうち、②について、
被保険者期間が要件に満たない可能性がある場合は下記についても確認してみましょう。

・入社前に失業給付の受給資格決定を受けていないか
前職の離職日から1年以内に再就職しており失業給付の受給資格を決定していない場合は、
前職での雇用保険加入期間分も通算することができます。
離職後に再就職手当や失業給付を受け取っていなくても受給資格決定を受けていると
前職の雇用保険加入期間は通算できません。

・産前休業開始日を起算点として数えているか
令和3年9月1日以降、産前休業開始日等を起算点として、
その日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月以上あるか、
に変更されています。

給付金支給に影響がありますので、注意が必要です。
(菊沢)

60歳到達時の賃金登録と高年齢雇用継続給付について

2022.11.18.

60歳以上65歳未満の雇用保険加入者に対し、高年齢雇用継続給付が支給されることがあります。
高年齢雇用継続給付は「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」(60歳以降再就職した一定要件を満たす方に支払われる)とに分かれますが
雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の一般被保険者が
原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べ75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。
(給付上限額がある為、支給されないケースもあります)

申請には60歳到達時等(60歳の誕生日前日 または 60歳到達以後被保険者だった期間が通算5年以上となった時)の賃金登録が必要なため、「雇用保険被保険者六十歳到達時賃金証明書」を事業主が作成することになります。

尚、転職後すぐに60歳に到達した場合等には賃金登録に際し転職前の賃金情報が必要なため、59歳以上の退職者には、必ず離職票を交付する事とされています。(転職先で60歳到達賃金登録の際、その離職票を使用します)

現在は60歳到達時等賃金登録は、義務ではありません。
しかし、60歳到達後に賃金低下し支給要件に該当した場合や、転職等により支給要件に該当する場合、60歳到達時点の事業主が到達当時にさかのぼって賃金登録をする必要が生じるケースがあります。
遡り処理を避けたい場合や確実な処理をしたい場合には、被保険者が60歳となった時点において賃金登録手続きを行うと安心です。

(前田)

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